三 ページ4
静かに扉が開かれた。鏡に自分たちの姿が映る。左腕に渾身の力が込められた。痛いんだけど。静かに肘鉄を食らわせて拘束を解き、中へ。
荷物を傍において、皆がばらばらに座った。あれ、私たちが一番荷物多いな。
「本日は顔合わせとスケジュール確認、ワークショップのみです。明日丸一日と明後日の午前中に最終選考、午後に結果発表となります。詳細を確認しますね。お手元の紙をご覧ください」
さっき配られた紙を、フェイストゥーフェイスの状態でのぞき込む。パーソナルスペースってご存じかな、友よ。暑苦しい。
そんなことも気にせずに熱心に話を聞く翼。いや、だから暑いって。
「____プログラム上、ワークショップ以降は出演者の方々がいらっしゃいます。必要以上の接触はお控えください」
ざわつく稽古部屋。大騒ぎするの古典単語はののしるね、これテスト出るよ。
場違いなことを考えつつ、話を聞く。注意事項多いね。
「____以上です。では、早速ですが顔合わせを行います。荷物を鏡とは逆の方に置いて、円状にお座りください」
指示を瞬時に聞いて、周りの人、私以外の人が全員立ち上がった。
反射速度が遅いせいで、ワンテンポ遅れて移動する。カバンのチャックはちゃんと閉めました。
「名前と、出身地。あとは……まあ、何か一言どうぞ!では、そちらの方から、時計回りで」
「はい!」
自己紹介が始まった。
自信たっぷりな人、謙虚な人。大学生、社会人。色んな人がいるけど、共通点がある。私たち以外、全員男性だ。
私の左隣の人から始まって、とうとう自分たち。ためらいもなく、翼が立ち上がった。
「はい、エントリーナンバー、196番!西川翼です!!中部地方出身、JKです!!大好きな作品に、大好きな役者さんたちと出演できるチャンスなので、一生懸命に頑張ります!よろしくお願いします!!!」
ぱらぱらとした拍手。歓迎は、まあ、されてないよね。全員敵なわけだ。
全員の視線が、一斉に私へと向けられた。特に気にせず、立ち上がって、周りを見渡す。
『……東野Aです。翼とは、同級生です。演劇とは基本的に裏方仕事専門として関わってきたので、ここに来れたことに驚きです。今回、始めての主演を務めてみたいと思ってます。よろしくお願いします』
また周りがざわついた。おしゃべり大好きかよ。
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Canon(プロフ) - * haru *さん» コメントありがとうございます!ご期待に沿えるよう、頑張ります! (2020年8月1日 7時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
* haru *(プロフ) - はじめまして。こちらの作品を拝見してとても幸せな気持ちになりました…。テンポのいい主人公二人の会話が大好きです!お忙しいとは思いますが、どうかお体に気をつけてこれからも頑張ってくださいませ!応援しております(*^^*) (2020年7月31日 1時) (レス) id: 91042359bd (このIDを非表示/違反報告)
Canon(プロフ) - なゆかさん» コメントありがとうございます!遅い更新と拙い文章ではございますが、楽しんでいただけているのなら幸いです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
なゆか - いつも楽しんで読ませてもらっています! (2020年7月5日 19時) (レス) id: d46d9b1c0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Canon | 作成日時:2020年6月25日 7時