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二十九 ページ30

『夢みたい』
「んーー」
『足元がふわふわする』
「んーー」
『……生きてる?』
「んーー」
『死んでる?』
「んーー……ん?!」

二人共々精神があらぶって、少し外に出ることに。コンビニでチョコを補給して、元選考会場へ。次の本格的な稽古からはもう少し広いところでやるんだって。

魂の半分が口から出ていたチェバ子、いい感じに吸い込んで現実に戻ってきたらしい。

「死なないよ?!私の時代はこれからだよ?!」
『……んー』
「え、何か暗い、いつも以上にきのこが繫殖」
『自信がないの』

信号を渡り切った。あとはもう少しだけ建物に近づいて、入り口から入って、そのままさっきの部屋に戻るだけ。

でも、さっき啖呵を切ったくせに、足を踏み出せない。立ち止まる私と、その数歩先で私を振り返るチェバ子。

「演技に?」
『……全部』
「全部……自分に自信がないの?」

今すぐにでも電車に飛び乗って帰りたいぐらいだ。

コンビニのビニール袋をぶんぶん振り回して、気を紛らわせた。

『また、あの学校生活が始まるかと』
「うん」
『高校の三年間の中の、ただの、思い出話になると、思ってて』
「ならないの?」
『……どうして、どこをどうして笑い話になるの』
「選んでもらえたねって。認められたんだよって」

震える手で、ビニール袋の中からパッケージを取り出し、チョコの封を開けて、一粒、口の中に放り込む。

ああ、一体何を認められたのか。

この平均以下の演技力?女子が刀剣男士を演じるという話題性?チェバ子の歌唱力?私たちの仲の良さ?

お互いに、何も言わないまま。チョコをゆっくり、ゆっくり口の中で溶かす。

「……Aちゃんと、劇をしたい。でも、学校では絶対してくれないから、誘った。キャラに合ってると思ったし、いいとこまで行ったら、少しでもするかなって」
『ん』
「楽しくって。でも、他の人皆上手で、選ばれないって確信してた。役者さんとも会って話して。もう、いいやって」

再びの静寂。車の走行音が耳に響く。

正直言えば、お互い本気じゃなかったってことだ。だから、あんまり緊張せず、楽にやれた。選ばれたいとは思わず、選ばれたらいいねぐらい。他の九組に失礼極まりないな。

「……これから、忙しくなるね」
『テスト、溜まってくよ』
「何とかしよ」
『出席日数。取れないかも』
「課題、一緒にやろ」

手を差し出された。逃げるのは、もう無理ってわかってるつもりなんだ。これでも。

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Canon(プロフ) - * haru *さん» コメントありがとうございます!ご期待に沿えるよう、頑張ります! (2020年8月1日 7時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
* haru *(プロフ) - はじめまして。こちらの作品を拝見してとても幸せな気持ちになりました…。テンポのいい主人公二人の会話が大好きです!お忙しいとは思いますが、どうかお体に気をつけてこれからも頑張ってくださいませ!応援しております(*^^*) (2020年7月31日 1時) (レス) id: 91042359bd (このIDを非表示/違反報告)
Canon(プロフ) - なゆかさん» コメントありがとうございます!遅い更新と拙い文章ではございますが、楽しんでいただけているのなら幸いです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
なゆか - いつも楽しんで読ませてもらっています! (2020年7月5日 19時) (レス) id: d46d9b1c0c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Canon | 作成日時:2020年6月25日 7時

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