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十二 ページ13

人見知りが発動した。大して身長に変わりのないチェバ子の陰に隠れて、やり過ごす。

「ああ、ちょっと入りにくいかぁ。何を忘れたの?」
「えっと、単語帳を」
「俺、取ってくる?」
『あ、明日でいいです!』

下を向いて、一生懸命にチェバ子の腕を引っ張る。

いいよ、いいよ。そんな、重要なものでも、いや、重要だけど、わざわざ話しかけてでも取ってもらうほどでも。

そういう意味を含めて、声をかけるが、それを聞くか聞かないかのタイミングで扉を開けてしまった。

「ねえねえ、中に忘れ物なぁい?」
「単語帳らしいんだけど」

ひゅっと息をのんで、顔を上げた。

ドアから中を覗き込み大声で話しかけるお兄さん二人、中からそれにこたえる声が聞こえる。

「単語帳?小さいよな」
「あ、それ?」
「えっとこれー?隅っこに置いてあったよ」
「それです!ありがとうございます!!」
『あ、ありがとう、ございます』

あっさりと単語帳は見つかり、チェバ子へ手渡された。

震えた声でお礼を言い、今度こそ帰ろうとまた腕を強く引っ張る。

「失くさなくってよかった。あ、そうだ。ワークショップお疲れ様!俺のアドバイス、役に立てたかな」

会話がまだ終わらない。陰に隠れたまま、何度も頷く。相手が、微笑んだのが見えた。

「麻璃央が話しかけてたの、この子たちだったの?翼ちゃんと、Aちゃんだっけ?」
「はい!」
「同じ名前だから、ちょっと憶えてて」
『チェバ子、帰ろ。帰ろ、帰ろ……!』

会話が、まだ、終わらない。中の何人かが扉近くに寄ってきた。もう無理、死んじゃう。

ドン引きするぐらい人との距離が近いチェバ子、不要な会話は控えろと言われたのに、何かまた話そうとするんだから、ほんとやめてほしい。

『用事終わった!!会話、だめ!!!』
「ええ、世間話ぐらいならいい__」
『私の!心臓を!!労われ!!!!』

名前の話で盛り上がっていた三人が、どっと笑った。中から覗いていた人たちも、つられて笑う。

信じられないぐらい顔が熱くなっていくのがわかる。

「わかったわかった!帰ろっかぁ。お疲れさまでした!」
『お、お疲れさまでした!』
「うん。お疲れ様ぁ」
「お疲れ、明日からも頑張ってね!」

ようやくチェバ子の足が動き始めた。猛烈に引っ張って受付の携帯を受け取って、外に駆け出した。

「あはははは!ちょ、ま、A!!人見知りしすぎだよぉ」

ああ、もう!私にとっては笑い事じゃないんだけどな!

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Canon(プロフ) - * haru *さん» コメントありがとうございます!ご期待に沿えるよう、頑張ります! (2020年8月1日 7時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
* haru *(プロフ) - はじめまして。こちらの作品を拝見してとても幸せな気持ちになりました…。テンポのいい主人公二人の会話が大好きです!お忙しいとは思いますが、どうかお体に気をつけてこれからも頑張ってくださいませ!応援しております(*^^*) (2020年7月31日 1時) (レス) id: 91042359bd (このIDを非表示/違反報告)
Canon(プロフ) - なゆかさん» コメントありがとうございます!遅い更新と拙い文章ではございますが、楽しんでいただけているのなら幸いです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
なゆか - いつも楽しんで読ませてもらっています! (2020年7月5日 19時) (レス) id: d46d9b1c0c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Canon | 作成日時:2020年6月25日 7時

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