ただいま、僕らの初恋 (ページ10)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:12,739 hit

彼女の夢ページ10

．

「それでさ、さっきの話なんやけど。」

再び自転車を押し、少し歩いた頃
和田さんが口を開いた。

駿佑「さっきの話？」

「うん。さっきの、夢の話。」

駿佑「……ああ、カラオケの。」

「そう、カラオケの。」

駿佑「それがどうしたん？」

合っていた視線が逸らされ、
和田さんはまっすぐ前を見ながら
私も夢があるの、と言った。

駿佑「夢？……確か、自己紹介の時は無いって」

「わ、よく覚えてるねそれ。」

駿佑「だって、ひとりだけ無いって言っとったから。印象に残ってて。」

嘘、本当はめちゃくちゃ耳を凝らしてた。

「……なんか、皆の前で言えへんくて。馬鹿にされたらとか、色々考えててん。」

駿佑「そうなん？……聞いても、大丈夫？」

「……道枝くん、夢の話してくれたのに、私は内緒とかフェアじゃないやん？」

再度こちらを見て笑った和田さんは、
笑ってるのに、何だか顔が強ばってた。
きっと話すのが怖いんやろうなって思って、
歩くのを止めて和田さんを見つめる。

駿佑「大丈夫やで。絶対馬鹿にしたりなんかせん。」

「……うん。道枝くんは大丈夫やって思ってる。」

駿佑「教えてや。和田さんの、夢は？」

きょろきょろと視線がさまよって。
はくはく、と口が動いて。

「……お芝居が、したい。」

彼女はそう言った。