ただいま、僕らの初恋 (ページ26)

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彼女の演技ページ26

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「 ……" ロミオ、私はっ…！……私は、この恋と共に生きていく覚悟が出来ております " 」

まるで、足を掴まれ
底なし沼へと引き摺りこまれるような
そんな感覚だった。

「 " 貴方は、私の気持ちをお疑いですか？こんなにも……こんなにも、貴方だけを愛しているのに " 」

鳥肌が立つ。
ぶるりと身が震える。

Aちゃんはこんなにも、
激しく恋に燃えるような瞳を
することが出来るのかと。

中学生ながらも、
ひどく彼女の演劇に
惹き込まれてしまっていた。

「…………はー！人前で演じるのって、やっぱり緊張しちゃうね。まだ全然上手くないし、」

駿佑「そんなことない！！」

勢いよく立ち上がった弾みに、
音を立てて椅子が倒れる。

Aちゃんの肩がビクリと震えて
目は大きく見開かれていたけど、
そんなの気にしてる余裕もないくらい
今のこの昂っている気持ちを
Aちゃんにぶつけてしまいたかった。

駿佑「Aちゃん、すごいよ。めちゃめちゃ感動した。本当に……天才なんじゃないかって思った。なんていうか、全身がぐわぁー！って、ぶわぁーって！」

「ぐ、ぐわぁ？」

駿佑「上手く、言えないんやけど……何かもうとにかく、ジュリエットやった！」

本当に、自分でも何言ってるか
分からないくらい
ぐちゃぐちゃな言葉たち。
だけど俺のこの気持ちを
的確に伝えられる言葉なんて
十三歳の俺は、知りもしなかった。

もどかしくて、思わず眉を顰める。
するとAちゃんは、
ぷっと吹き出して
楽しそうに笑い出した。

「あはは！何言ってるの道枝くん。……ふ、ふふ、ぐわぁって。ぶわぁって、あはは、……ふふ。」

駿佑「……そんな笑わんでもええやん。」

「ごめん、ふふ、……だめだ、おかしい。おかしいよ、はは！」

羞恥心が俺を襲い、
急激に体が熱くなる。

対して、心は冷静になったのか
倒れた椅子を元に戻し
再び座って彼女を見つめた。

「はあー。はは、お腹痛い。……久しぶりにこんな笑ったかもしれへん。」

駿佑「…………俺は真剣やのに。」

「ごめんって。もう笑わない。……ふふ。」

駿佑「笑ってるやん！」

横腹を擦りながら
俺の前に座ったAちゃん。

その視線はゆっくり窓の外は向いて、
俺はそんな彼女の横顔を眺める。

彼女は、視線はそのままに
噛み締めるように話し始めた。