ただいま、僕らの初恋 (ページ25)

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演劇部ページ25

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駿佑「和田さ……Aちゃんごめん。せっかくの部活オフやのに、課題手伝ってもらっちゃって。」

「…ええよ、気にしないで。」

六月。

まだ名前で呼ぶのがぎこちない俺と、
呼ばれるたびにぎこちなく返事をする彼女。

だけど、あの告白とも呼べない告白から
空いてしまった距離は
また少し、近づきつつあった。

駿佑「演劇部はどう？」

「ああ、うん。ええ感じ。やっぱ楽しいねお芝居。」

Aちゃんは、俺に言っていた通り
六月になって演劇部に入った。
放課後はいつも「行ってきます」と言って
いそいそと演劇の練習に行く。

どうやら１ヶ月後に、
演劇「ロミオとジュリエット」の
配役を決める
校内オーディションがあるらしい。

その「ロミオとジュリエット」は
俺たちの中学校の演劇部が
昔から同じ脚本でやっている
伝統のあるものらしく、
二年に一度行われる校内の演劇会で
どの年も演じてきたのが
「ロミオとジュリエット」なんだと
Aちゃんは目を輝かせて話してくれた。

だからAちゃんは
１ヶ月後のオーディションに向け、
自身がステージ上で
ジュリエットを演じることを目標に
毎日頑張っているそうだ。

「私二年生からの途中入部やん？せやからやっぱり、周りと差はあるんやけど……でも、頑張りたい。」

駿佑「そっか。ちなみに台本はどんな感じなん？」

「あ、えっとね……」

鞄をがさごそと漁り、
教科書サイズの冊子を取り出す。
つい最近貰ったとは思えない、
傷の付いた冊子だった。

駿佑「ほえー。セリフ長！覚えるの大変そう。」

「それがね、意外と頭に入ってくるんやで。こことか。パッと見長いんやけど、ジュリエットになれば自然に口に出てくる。」

ここ、と指さされた箇所を見る。
一部分だけ、
特に目を引く文章があった。

駿佑「 …" 私は、この恋と共に生きていく覚悟が出来ております " 」

「…………覚悟、か。」

頬杖を付き、
そう呟いた彼女を見詰める。
その瞳はなんだか悲しげで、
寂しそうだった。

駿佑「…………ねえ、Aちゃん。」

「ん？」

駿佑「Aちゃんやったらさ、この場面、どうやって演じるん？」

「…………えっ。なに急に。」

駿佑「ごめん、ちょっと気になって。……試しにさ、俺をロミオだと思って。台詞、言ってみてや。」

「……うーん、分かった。」

なんとなく思いつきで言った一言。

彼女は少し悩んだ挙句、
ゆっくり椅子から立ち上がって
深呼吸をした。