ただいま、僕らの初恋 (ページ3)

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前髪ページ3

．

新学期初めてのHR。

真新しい教室の
独特の空気感に包まれながら、
それぞれ簡単な自己紹介をしていく。

俺も、人見知りながら
なんとか自己紹介を終え
席に着こうと思ったとき。

先生が俺を指差し、
「未来のスター誕生に立ち会えるで。」
と言った。

おかげで一気に注目。
知っている奴らはみんな歓声を上げ、
なぜか教室に拍手が巻き起こった。
あのときの先生の満足気な顔といったら、
俺は一生許さんとまで思った。

そこから順に回り、
最後のひとり、和田さんの番になった。

相変わらず前髪は隠していたけど、
席を立った和田さんは
なんだか物凄くちっちゃな小動物みたいだった。

「Aです。……あっ。違う、和田です。」

担任「A･ワダ？」

「日本人です……。」

ど、とクラスに笑いが起きる。
和田さんは肩を竦めていた。

「好きな物は、……えっと、音楽とドラマ見ることで。苦手な物は、と、……苦手な物と夢は、特に、ありません。二年間、よろしくお願いします。」

最後にぺこり、と頭を下げて
再び席に着く。
隣の列の人たちが
小さく「可愛い」と呟いたのが聞こえた。

和田さんの瞳がこちらを向く。
ぱちりと視線がかち合った。

な、ん、で、す、か。

心臓が小さくどきんと動いた。
特に用もなく、
ただ見てしまっていただけなので
慌てて適当に「前髪」と口を動かす。

きょとん、と目を丸くしたのは一瞬。
ふと前髪から手が外れた。
ぴょこ、と一束上に跳ねる。
「あ！」とした顔をすると、
再び和田さんは掌で前髪を覆った。

どうやら、前髪を抑えていたこと
忘れていたらしい。
なんていうか、ちょっとアホだなと思って
笑いが零れる。

再び俺の方を見た和田さんは
僕が笑っているのを見るなり、
ちょっと頬を膨らませて、
視線を泳がせて、またこっちを見て。

口に人差し指を当てながら、
恥ずかしそうにゆっくりとはにかんだ。

心臓が、また一段と大きく
どきんと鳴った気がした。