ただいま、僕らの初恋 (ページ20)

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キスページ20

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香山「戻ろう、キャンプファイヤー。話聞いてくれてありがとう。変なこと言ってごめんなさい。」

駿佑「俺の方こそ……ごめん。」

悲しそうな笑顔を見せて、
リコは扉の方を向く。

香山「きゃっ……！」

駿佑「っ！危ない！」

そのはずみで、
テラスの床に足を滑らせたのか
リコが悲鳴を上げると共に
体が前に倒れそうになっていた。

咄嗟にリコの手を掴み、
後ろから腰へ腕を回す。
そのまま力いっぱいに手を引くと、
彼女の体はぽすりと俺の方へ倒れた。

駿佑「あっぶねー……危機一髪。」

香山「ご、ごめん……ありがとう……」

駿佑「良いよ、大丈夫。それより平気？足首捻ったりとかしてへん？」

香山「……大丈夫、してへん。」

駿佑「そっか、よかった。」

危機一髪、リコは怪我をしていなかった。
安堵で深く息を吐く。

女の子には絶対怪我をさせてはいけない、と
お父さんにきつく言われていた。
それと、絶対に泣かせてはいけないとも。

両親の言葉を思い出し、
今リコが転倒をしなかった安心で
思わず腰に回した手に力が入っていたようだった。

香山「…………あの、駿佑、」

駿佑「え？……あ！ご、ごめん。」

彼女の声で我にかえる。

慌てて体を離そうとしたとき、
くるりとこちらを向いた彼女の
伸びてきた手に頬を包まれ、
気付いたときにはその頬に柔らかい感触があった。

頬にキスをされたと脳が理解したのは、
リコが顔を真っ赤に染めこちらを見つめたとき。
そして、テラスの扉の向こうに
黒い人影が見えたときだった。

それに気付いたときは、
小さく彼女の名前を呼ぶので精一杯で。

「ごめん」と一言だけ呟いた彼女は、
背を向け走り去っていく。

頬に触れた唇の感触はまだ残っていて、
テラスで立ちすくむ俺に
ぽつりぽつりと雨が落ちてきても、
俺はしばらくそこを動けずにいた。