ただいま、僕らの初恋 (ページ15)

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盗み聞きページ15

．

どうやら、私と道枝くんは
友達ではなかったらしい。

誰か伝いに聞いたんじゃない。
本人の口から聞いたんだ。
確かに、道枝くんは
「友達かも危うい」と言っていた。

ショックだった。

今まで男の子とは極力関わってこなかったから、
私にとって道枝くんは
初めて出来た男の子の友達だった。

でもそう思っていたのは
私だけだったらしい。

ハナ「A？どうかしたん？」

「……私ってさ。道枝くんの友達なのかな。」

ハナ「えぇ？何、急に。」

「…………ううん、なんでもないよ。」

じゃがいもの入ったバスケットを
運んできてくれたハナちゃんが
不思議そうな目で私を見つめてくる。

その視線がゆっくりと、
ひとつ前のテーブルで懸命に人参を切る
道枝くんに向けられた。

ハナ「駿佑は……駿佑のAを見る目は、私とか、陸を見る目とは違った気がするな。」

「……どういうこと？」

ハナ「好きな物を前にした、愛おしそうな目やったで。周りにもそれがわかるくらい。」

「…………中学生が何言ってんねん。ハナちゃん、それきっと少女漫画の読みすぎだよ。」

ハナ「ひっどーい！」

こらこら〜と言って
ハナちゃんが脇腹を小突いてくる。
それがおかしくてちょっと笑った。

「でも……私は、道枝くんの友達じゃないよ。」

ハナ「どういうこと？……もしかして彼女ってこと？」

「えっ。違うよ！……道枝くんが言ってたの。私とは友達かどうかも危ういって。」

ハナ「……何？それ。本人が言ってたん？」

「うん。……盗み聞き、しちゃった。」

道枝くんの隣に並ぶ香山さんを見て、
ハナちゃんは小さく「ああ」と呟いた。

ハナ「駿佑の隣にリコが立ってるの見て、どう？」

「…………どうって、」

ハナ「嫌だなとか、思わへん？」

「……思わへんよ。むしろ、お似合いやないん。」

ハナ「ほんまに？」

「ほんまに。」

香山さんは可愛い。

顎下で綺麗に切りそろえられた髪は
澄んだ黒色で、動くたびにふわふわ揺れる。
近くにいけばいい匂いもして、
いつも男の子たちが可愛いと噂していた。

道枝くんの隣に立っても、凄くお似合い。

ハナ「駿佑が、リコを好きになったら？」

投げかけられた質問に、
じゃがいもを洗う手が止まる。

「好き」

好きって、一体どんな感情なんだろう。

ハナ「駿佑がリコと付き合ったら？」

ハナちゃんは、真っ直ぐ私を見つめていた。