ただいま、僕らの初恋 (ページ11)

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約束ページ11

．

駿佑「お芝居？」

「うん……えと、その、……女優？っていうのかな。はは、……うん。変、かな。」

自分が想像してる物とは、
だいぶ違くて、少しだけ驚いた。
でも、言わばそれは
俺の進みたい道と同業と呼ばれる物であって。

恥ずかしそうに俯く和田さんに、
どうしようもなくもどかしい感情が
込み上げてきた。

駿佑「変やない、全く変なんかやない。」

「……うん。」

駿佑「教えてくれて嬉しい。形は違えど、目指している場所が近くて、嬉しい。」

「…………うん。」

嬉しかった。

彼女が自分に、秘密にしていたであろう
夢を教えてくれたこと。
目指している場所が、同じなこと。

目の前で、彼女も嬉しそうに
微笑んでくれていること。

その全てが、俺の気持ちを昂らせる。

「ドラマ、見るの好きで。それこそさっき、道枝くんが言ってた金田一も、好きで見てたの。」

駿佑「言っとったよな、ドラマ好きって。」

「それも覚えてるの？凄いね。」

駿佑「あ、いや……俺も、ドラマ好きやし。」

「そっか。……そう、それでね。たまにテレビの中の人の真似して、お芝居して、それが凄く楽しくて。」

駿佑「……うん。」

「気付いたら、思うようになってたの。私も、お芝居で別の誰かの人生を生きられたらなって。」

駿佑「別の、誰かの人生？」

「うん。原作の漫画とか小説とか、その中に生きている人達を私がこの世界で生きさせてみたい。」

和田さんの目は
夢見る少女そのもので、
眩しいくらいにきらきら輝いていた。

駿佑「……かっこいいね、和田さん。」

「……え？」

駿佑「夢を持って、夢を追ってる人はかっこいい。俺が今日言われたこと。ほんまに、その通りやわ。」

「…………道枝くん。」

駿佑「今の和田さん、めちゃめちゃかっこええよ。きらきらしてるし、楽しそう。」

「そう、……かな。」

駿佑「うん。……応援するよ、俺。」

「…………ほんまに？」

駿佑「当たり前やん。和田さんの夢が叶うように、ずっと応援してる。女優、最高な夢やん。」

「私も。……道枝くんの夢が叶うの、応援してるよ。」

駿佑「んじゃあ、お互いに。」

自転車を片手で支えて、
もう片方の手を差し出し小指を立てる。

意図がわかったのか、
和田さんも同じように手を出し、
小指を絡めとった。

駿佑「お互いの夢が叶うように、切磋琢磨。」

「ふふ、……うん。頑張ろう。」

中学生二年生、春。
十三歳の少年少女の、拙い約束。