ふたりのカタチ《Kei.I》

０６. ページ6

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正午を過ぎた頃、
カーテンの隙間から漏れてきた朝日(と言える時間ではない)の光があたしの目を覚ました。




チラリと寝室を見れば、わずかに開いたドアから こんもりと膨れたベッドが見える。



まだ伊野尾は寝ているらしい。




結局、昨日はいつも通り うちに泊まっていった伊野尾。



あたしのベッドを自分の物のように１人で使い、グースカ寝てやがる。



くそう…床で寝たから体が痛いわ…




寝室の方を軽く睨みながら、コーヒーを作ろうとキッチンに向かった。




ただ焼いただけのトーストにジャムを塗って

誕生日プレゼントに貰ったマグカップにコーヒーを注ぐ。



寝ている伊野尾に 一応、気を使って音を小さくしたテレビを見ながら、ブランチを済ませた。





慧「…はよ」





背後から、ぬっと静かに現れた伊野尾。




「おはよ。まだ寝ててよかったのに。」


慧「…うるさくて目ぇ覚めた。」


「そこは、ご飯のいい匂いで目が覚めたって言えや！」




エヘヘと笑いながら「俺もコーヒー飲みたい」と椅子に座った伊野尾。




コーヒーを淹れようと、あたしが椅子から立ち上がると同時に「こんなちっさい音量で聞こえるの？」と伊野尾が言った。




慧「別に音でかくても平気だから〜」




あたしが伊野尾のために音を小さくしていたことをコイツは気づいてる。




「わかった」と言ってコーヒーを伊野尾の前に置いた。





慧「あ、あと昨日言い忘れてたんだけどさ、」


「ん？」


慧「ハーゲンダッツ、冷凍庫入れといた」


「え！？」




パタパタと小走りで冷蔵庫に向かえば、ちょこんと３つのハーゲンダッツが並んでいる。




「なんで３つ？」


慧「Aがこの前、その２種類で迷ってたから。俺も食べたかったし。」


「…ありがとう」





期間限定のこの２種類の味。



確かに迷って、でもハーゲンダッツだから高くて

悩みに悩んで、結局２つとも買わなかったんだ。





伊野尾は「俺が食べたかったから。」そう言って、

わたしの給料ではそう多くは買えない高い物を買ってきてくれる。




某有名企業のエリートサラリーマンと中小企業の普通のOLの給料の差なんて たかが知れている。




俺が欲しくて。飲みたくて。食べたくて。


そう言って、あたしの気持ちが後ろめたくならないようにしてくれる。




だから あたしも「ありがとう」以外言わずに、それを受け取る。


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