ふたりのカタチ《Kei.I》

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慧「いつまで過去の恋愛引きずるわけ？」






たまたま付いていたお笑い番組を見ながらポツリと言った。


伊野尾はビールを飲みながら無表情だ。



この部屋でテレビだけが笑ってる。







あたしだって この気持ちどうにかしたい。


吹っ切って前へ歩き出したい。







慧「どうせ、あの人はお前のことなんて綺麗さっぱり忘れて彼女と幸せに暮らしてるよ。」



「…だろうね。」



慧「いい加減現実みろや。アホが」



「…あたしだって見たいわ、アホ」






グサグサと突き刺さる伊野尾の言葉。



でも、間違ったことは何も言ってない。




何も言い返せないあたしは唇を噛み締めて涙をこらえるだけ。







慧「闘牛みたいに前だけ見て突進しとけ」



「例えヘタか！」






あまりにも真面目な顔して言うからフッと笑った。



あの人のことを一瞬忘れて笑った。







慧「あの人に愛されたかったとか思いながら死んでいくカワイソウなオンナにはなるなよ」






左手には炙ったさきイカ。


右手には100均の花柄のコップに入ったビール。



伊野尾はそれを交互に口に運ぶ。








慧「悔しかったら笑っとけ」






あたし一人が止まっていたって周りは進んでいく。


時間も、人の心も、すべて進んでいく。



立ち止まったままじゃいけない。


立ち止まったままのあたしに手を差し伸べてくれる人はいない。







慧「あんなくだらない奴のために涙なんて流すな」






たまに というか ほとんどくだらないことを言って

ヘラヘラしてる伊野尾だけど。





伊野尾の言葉であたしの心は救われる。




慰めることも、哀れむこともしない伊野尾の言葉にいつも救われる。


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