ふたりのカタチ《Kei.I》

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家に帰ってきたら、なんでか伊野尾まで付いてきて。





慧「俺、先風呂ね」


「まてコラァァァ！！！」





サラリ、とあたしが伸ばした手をかわして風呂場に向かっていった。





あたしの家だわ！


普通あたしが一番風呂だろーが！





クッソ！と舌打ちしながら シートで涙でほとんど落ちたメイクを拭き取っていく。






明日これ目腫れるな…


はぁ、とため息をつく。





ただ腕時計を見ただけで、息ができなくなるなんて思ってもいなかった。




まだ思い出にできていないあの時の記憶。




忘れたい。

早く終わらせたい。



そう思えば思うほど、頭から離れなくなる。






今考えれば、全然彼はあたしのことを見向きもしてなかった なんてわかるのに。




ただ呼び出された日にホテルに行っていたあの日々。


たまにレストランに連れて行ってもらって美味しい物を二人で食べた。




当時は、この関係を何とも思わなかった。



これが恋だと信じていた。





でも、



都合のいい女。



あたしはただそれだけだった。



そのレベルだった。







また じわり、と視界がぼやけてきてゴシゴシと涙を拭っていると、




「ふぃ〜♪」とおっさんみたいな声を出して

髪の毛をワシワシとタオルで拭きながら

パンツ一丁で伊野尾が出てきた。






慧「いや〜さいこぉ♪」





冷蔵庫でキンキンに冷えた缶ビールを一本プシュッと開けてゴクゴクと喉に通していく。




横目でチラリとあたしの目をこすっている姿を見ながら。






慧「思ってたんだけどさ、」






ふと、思いついたように。


ビールを飲みながら伊野尾が言った。






慧「Aは いつ前に進むの？」



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