ふたりのカタチ《Kei.I》

１９. ページ19

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「なんでいるのよ…」





ズズッと伊野尾に背中を向けながら鼻水をすする。




ふっと笑いながら あたしの頭をクシャッと手で触る伊野尾。



細いけど、それでも男の人の手。


大きくて温かい。




「ゔーっ…」と伊野尾の胸に顔を埋めると

何も言わずにポンポンっと優しく背中を誘ってくれる。





…優しい。


今日の伊野尾は優しい。







………………。








まてまてまて。

なんだこれ。


カップルかよ！！！！！





普段だったら絶対こんなことしないのに。



あたし、なに泣いた勢いでこんなことしてるの！？



伊野尾も何か言いなさいよ！！！！





急に恥ずかしくなってグッと伊野尾から離れると、とろ〜んとしたいつもの目で覗き込んできて





慧「ブスがもっとブスだぞ☆」






へへっと笑いながらゴシゴシとスーツの裾であたしの顔を擦る。







「…うっさい！！」






何か言えと言ったけどさ！！！！！


年頃のレディに向かってそりゃないだろ！！！



まぁ、今さらどうでもいいけどね！！


気にしないけどね！！






「…つか、痛いわ！」






拭くならもっと優しく拭けっつーの！！！



いや、まずハンカチで拭けっつーの！！！！！







慧「化粧落ちて 山姥みたい(笑)」









伊野尾はいつもこうだ。




人が落ち込んでいる時や泣いている時、

ヒーローみたいにスッとタイミング良く現れるくせに、

「大丈夫か？」とか心配するような言葉は一切言わない。




こうやって余計なこと言って、いつも通りヘラヘラ笑ってる。








慧「もうフラれちゃった？☆」


「フラれてないわ！」






クソ野郎！！！



お？今日どうした？優しくない？とか思っちゃったあたしのココロを返せ！！！

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