ふたりのカタチ《Kei.I》

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鈴木さんが選んだお店は小綺麗なレストラン。


普段のあたしだったら行かないオシャレなところ。





啓介「ここはお酒もだけど、ちょっとした料理も美味しいんだ」





いつもここに来るんですか！？

あたしには無縁の場所っすわ！




ニコニコと笑いながら、スッとあたしの座る椅子を引いてくれる鈴木さん。



スマートか！イケメンか！！


彼の紳士的な行動に、キュンときてしまう。





◇「こちら、本日オススメの赤ワインです。」




こちらが座ったタイミングを見て、

ウエイターがネイビーのボトルを持ってやってきた。




きゃー美味しそう♡なんて、かわいい反応ができればよかったのに。



グラスほっそー！！

そんなんじゃすぐ飲み終わっちゃう！

うちにはそんなワイングラスないな〜！

100均か貰い物のコップしかないわ〜！



メインのワインじゃなくて

ピカピカに磨かれた細長いグラスにしか目がいなかった。




静かに注がれて紅く染まったグラスをそっと持って。


ワインなんて普段ちゃんと飲まないから

どうするんだっけー！？なんて内心バクバク焦りながら

鈴木さんを見よう見まねで真似してみる。




まず香りを楽しんで 少し口に含むと、

ふわっと口の中に葡萄の味が広がる。



おいしい…！！！






啓介「…いい香り」





ワイングラスをくるくると回す鈴木さん。



「そうですね。」って口を開こうとした瞬間、

ちらっと見えた鈴木さんの時計に ドクン、と心臓が揺れた。




…あの人と、同じ腕時計。







啓介「Aさん…？」





鈴木さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。





「えっ、あ、このワイン美味しすぎて固まっちゃいました(笑)」





…大丈夫。


無理矢理にでも、口の端を上げて。


大丈夫。あたし、笑えてる。




たまたま同じだっただけ。


そう、ただの偶然。


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