＃Dragon's claw...96 ページ5
・大倶利伽羅side
蒼がいない―――。
それに気づいたのは、つい先程のことだった。
戦の喧騒と血飛沫の音、たたでさえ多い敵に気を取られている内に、一緒に居たはずの蒼天竜がいない事を見落としていたのだ。
気づいた瞬間、怖気が走った。
蒼天竜は今、不安定な精神をおして刀を振るっている。
誰かがついていてやらなければ、もろく崩れるであろうことは目に見えていた。
それに加えて、胸をざわつかせるこの嫌な予感。
現在進行形で続くそれは、時に喜々として戦場を走る大倶利伽羅にしては、大変珍しい物だった。
だから、この感情は恐らく「恐怖」だ。
長らく感じたことの無い――というか、一度も感じたことの無い感情。
蒼天竜に何かあったらどうする。
あいつを一人にさせて良い事が起こったことなんて一度もない。
(どこに行った...！！)
近くにいた光忠にその趣旨を伝え、大倶利伽羅は駆けた。
蒼天竜の微かな気配を頼りに。
しかしそれが余りにも心もとなかったので、結局は血の匂いを辿った。
その香りが、彼女の血でない事を願いながら。
―――近くまで来ていたのだろう。
「ッ！」
強烈な青い閃光が木々の間を縫った直後、凄まじい衝撃波と轟音が響く。
蒼天竜だとすぐに分かった。
場所も特定できた。一直線にその場に向かう。
視界を塞ぐ木の葉を切り捨て、―――そして大倶利伽羅は、開けた場所に出た。
その先に、呆然と突っ立っている小さな背中が見えた。
「蒼！！」
『.....！』
その名を呼べば、背中はふらりとこちらを向いた。
白い肌に、返り血がべっとりと付着している。
遠くからでよくは見えなかったが、...彼女の双眸にいつもの光が灯っていないのを疑問に思う。
しかしともかく、無事で良かった。
微かに口を動かし、蒼天竜は右手を上げた。
何を言ったかは分からなかった。無事なだけで充分だ。
―――そんな優しい安堵感を、
...一瞬にして粉々に砕いたのが、蒼天竜の背後で蠢いた黒い影だった。
...何だあれは。
己の目を疑った。
原型を留めていないにも関わらず、目と思われる赤い火だけが爛々と光っている。
大太刀が、迷いなく蒼天竜の胸を狙う。
蒼天竜は気づいていない。
世界の温度が一変した。
「蒼！後ろだ！！！」
『...？』
あらん限りの声で叫んだ。喉が潰れるかという程。たった一言を、力の限り叫んだ。
―――しかし、その言葉が間に合う事は無かった。
・
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＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
