＃竜の願い...122 ページ31
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キィ、と重い扉を開ける。
本丸の喧騒とは程遠い、審神者室の静寂。
―――部屋の主の性格とは似ても似つかない。
ここの静寂が、大倶利伽羅は嫌いではなかった。
きょろりと部屋を見回せば、...いつもの場所に、主である空寧が座っていた。
「お、来たか大倶利伽羅。具合はどうだ？大丈夫そうか？」
「...あんたに心配されるまでもない」
「はは、いつも通りのお前で何よりだよ」
空寧が笑顔で片手を振る。
来いよ、とでも言うように手招きをするので、素直にそちらへ向かった。
何の話だろうか。
大方の予想はついているが、
...もしそうなら、別に二人きりで話すことでもないだろうに。
「蒼天竜、...行っちゃったなぁ」
「......」
「お前が素直に蒼天竜のことを見過ごすはずないとは思ってたけど。...っていうか、お前が他の刀にああも無様に隙を突かれたのって、初めてじゃないか？」
「...それがどうした」
笑いを堪えるような空寧の声音が気に入らなかった。
無意識に、己の声に棘が含まれるのを否めない。
そんなことを言う為に、わざわざ俺をここに呼んだのか。
そう問えば、空寧は「いいや？」と首を振った。
「お前と蒼天竜の間に何があったのか、ちょっとばかり気になっただけだ。ほら、俺って好奇心旺盛だし？...なぁ、大倶利伽羅。あいつに、何を言われたんだ」
何を言われた？
それは、俺が蒼を引き留めようとした時の会話を聞いているのか。
―――それとも、すれ違い始めたあの日のことを聞いているのだろうか。
判断しかねたが、...大倶利伽羅は前者を取った。
その言葉を、舌の上で転がすように。
その言葉の意味を、もう一度、確かめるように。
「色々と話をした。あいつがこの期間に何を思っていたのか、どう考えていたのかを、...ほんの少しの片鱗だけ、垣間見れた気がした」
「...うん」
「そして最後、あいつが俺を気絶させる寸前に―――『ありがとう。...大好きだ』、と」
「オ"ッ」
変な声は主の物だ。
空寧が、両手で顔を覆う。
「すげぇぇぇ...あいつどんだけイケメンだよ...男よりもよっぽど漢じゃねぇかよ...俺惚れちゃうかも...」
「......」
聞かなかったことにした。
―――医務室のベッドで目を覚ましてから、ずっと考えていた。
蒼天竜の言葉の意味を。
言葉通りに受け取っていいのか。
それはつまり、...そういうことなのか。
困惑と混乱を抜きにして、はっきりと言える事は一つ。
あの言葉を溢した時の蒼天竜は、
ひたすらに、美しかった。
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＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
