＃Dragon's claw...95 ページ4
・
刀剣女士として顕現した理由を知りたかった。
―――己の存在意義を、明確に掴みたかったから。
他者との違いも、己の武器だと思っていた。
―――あいつは、不器用なりに私の事を認めてくれていたから。
でも、それは多分、違った。
私が刀剣女士としてここにいるのは。
...刀として持っているはずの「物語」が、不十分だからだ。
私は元から空っぽで、空っぽだった器にちょっとしたおまけがついてきたような物。
私は、ここに居る意味の無い者なのか。
［貴様は歴史の異分子だ。ここで貴様を折り、時を遡行し貴様の本体もこの世から消す事によって、歴史の流れを元に戻す！！］
『...じゃあ、今までの私の努力は全部、無意味だった、っての...？』
絞り出した蒼天竜の声は、かすれていた。
無意味？
違う。そんなはずない。
顕現した当初よりも強くなれた。
新しい仲間だって増えた。同じ戦場に立って戦うのが、純粋に楽しかった。
それが全て無意味で―――無駄だったなど。
『違う、違う違う違う！お前の言う事なんか、聞いて、堪るかぁッ！！』
［...っぐああああ！！？］
蒼天竜の叫び。
それと同時につんざいたのは、紛れもなく雷鳴であった。
一撃必殺の竜の嘶き。
蒼白い雷撃をもろに食らった大太刀は、黒煙を上げその場に倒れる。
仕留めた、のだろうか。
ついさっきまであれだけ口を利いていたのが嘘のようだった。
『わたしは―――』
「蒼！！」
『...！』
ぐるぐると無意味に泥沼を周回していたところで、聞き慣れた声が響いた。
止まっていた思考が、その一声ではたと動き出す。
顔を上げれば、遠くから誰かが走ってくるところだった。
...大倶利伽羅だ。
その後ろには、合わせて三つ、影が見える。
『...良かった。皆、無事だったんだ...』
全員無事ならそれで良い。
―――場の雰囲気が悪くなるのも嫌だし、今のは、無かった事にした方が良さそうだ。
己の危うさに気づかされた瞬間から襲い来る、
不安と恐怖を押し隠しながら、蒼天竜は右手を上げた。
その様子を見て、大倶利伽羅は心なしか安心したような表情を浮かべた。
...のも、束の間。
蒼天竜の背後に視線を移動させた瞬間、彼は血相を変えて叫んだ。
「蒼！後ろだ！！！」
『...？』
刹那。
ズシャッ...という、生々しい音が耳に入った。
例えるならそれは、生身の人の血肉を切り裂いた音。
...は。
ゆっくりと己の体を見下ろすと、
―――背後から鎧を貫通し、紅く染まった刀身が胸の中心を貫いていた。
・
＃Dragon's claw...96→←＃Dragon's claw...94
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 368人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
