＃竜の願い...111 ページ20
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『......』
小さくなる光忠の背中をぼんやりと眺める。
―――「どこかで、気づいてるんじゃないのかい？」
何に、とは言わなかった。
何に？とは聞けなかった。
光忠の言う通り。
(気づいてない訳じゃなかった。...気づきたく、なかったから)
今己が抱えているこの感情の正体に、気づきたくなかったから。
こんなにも曖昧なものに振り回されているという事実を、認めたくなかったから。
所詮、刀は刀なのだから。
―――人のように、"何か"を愛することは出来ない。
―――人のように、器用に立ち回ることは出来ない。
だから私はまだ、...この感情に気づいてないふりをしなければならない。
まだ、人に成り切れていない私には。
『...そんな器用なこと、出来る訳ないだろ...』
ぽつり、と呟く。
まさか現世にこうして顕現して、こんな苦悩を抱える羽目になるとは思わなかった。
大きなため息。
...自分に嘘をつき続けることがどれほど辛いか、私は知っている。
このままじゃ、また一つ、嘘に嘘を重ねなければならなくなる。
いつかは、認めなきゃならない。
ただそれは、今じゃない。
(そうだ。...今じゃない。今すべきことじゃない)
では、今すべきこととは何か？
―――部屋の隅に立て掛けてある二振りの太刀の元に歩み寄る。
...毎日欠かさず手入れをしている刀だ。
私の身を守る最大の武器であり、...私という存在そのものの依り代。
スラリと刀身を抜き放ち、縁側へと進み、おもむろに日の光に透かす。
微かな曇り。
透き通っているはずの刀身に、微かな霞がかかっている。
また、ため息。
刃に曇りがある内は、刀の切れ味も落ちる。
『今の私じゃあ、...なまくらの包丁よりも切れ味悪いだろうなぁ...』
刀としての役割を果たせないのなら、私はもう、私じゃなくなる。
一刻も早く、...何かを変えなければならない。
どう、しようか。
一向に回らない頭で考えながら、意味もなく握った太刀を眺めていると。
―――"それ"は、唐突にやってきた。
『はっ...！？ぐ...、くっ...！』
ガシャン！
...派手な音を立てて、手から刀が落ちる。
ふらり、足元がゆらつき、体勢を維持できず否応なく畳に膝をつく。
自力で立っていられなくなるほどの、激しい鈍痛が襲い来る。
なんだ。なんだこれは。
胸が痛い。心臓に激痛が走る。体に力が入らない。
あの大太刀に胸を貫かれた時の痛みとは―――また別物の痛み。
なんだ、...何が。
収まらない激痛に、ただ、喘ぐことしか出来なかった。
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＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
