＃竜の願い...106 ページ15
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『また...やっちゃったぁ...！』
本丸。長屋の屋根。
そこで一人、切れた息を整えながら私は頭を抱えた。
また伽羅のこと、無視してしまった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
心臓がうるさいくらいに脈動しているし、手にはじっとりと汗をかいている。
あいつはただ、私のことを心配してくれただけなのに。
またしても、こっちの身勝手な事情で逃げてきてしまった。
大切な事だからもう一度言う。
本当に、何がどうなっているのか分からないくらい、頭の中が混乱している。
混乱する要素なんてどこにも無いのに。
―――いや。
いや待て。
違う。どこにも無い、という訳ではない。
強いて言えば、伽羅のあの手の動きが妙に記憶に焼き付いて離れないのだ。
こちらに伸ばされ、そして、私に気づかれないようにと下ろされた手。
別に労いの言葉以外のものが欲しかった訳じゃない。
...別に、「無事で良かった」という言葉だけじゃ足りないとか、そういう事は思ってない。
ただ何となく、私に向かって伸ばされかけた手を見て―――淡い期待がよぎったのだ。
まぁ得られた結果として、あえなくその期待は裏切られた訳だが。
その手で、触れてはくれないのかと。
少しだけ、...ほんの少しだけ、力なく下げられた手を見て、寂しく思った自分がいた。
(そうだ...)
だから混乱しているんだ。
「伽羅に触れて欲しかった」？
この言葉の破壊力と言ったら、...少なくとも私の中では凄まじい打撃力だ。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。
何故？理由は？
何故寂しいと感じた？
伽羅のあの表情を見て―――私は、何を思った。
私は伽羅に、何を求めていたんだ。
『...分からない...！』
出口のない迷宮を、がむしゃらに歩き続けている感覚。
明確な答えが掴めるまで、私は恐らく前に進めないだろう。
これから、どうすればいい。
公に投げかけた問いとは、また違った意味での「これから」だ。
『...ん』
ぽつり、...ぽつりと。
ふと気づけば、
今の私の心境をそのまま表したような薄暗い曇天から、雫が落ちてきていた。
雨脚は次第に強くなる。
私は雨宿りするでもなく、ただそこで突っ立ったまま、
ぼんやりと、地平線まで広がる灰色の雲を眺めた。
頬を雨粒が叩く。
あっという間に、全身濡れ鼠になる。
―――身体を伝う幾千万の雨粒を視界に捉え、...思った。
己の内でとぐろを巻く淀みが、この雨で、全て流れてしまえばいいものを―――。
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＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
