＃竜の願い...105 ページ14
・大倶利伽羅side
「待て」と言って素直に振り返られたところで、
...俺は何か、あいつに気の利いた言葉の一つでもかける事が出来たのだろうか。
小走りで去っていった背中を呆然と眺めながら、大倶利伽羅は思った。
何も、言えなかった。
蒼天竜が無事に生きて帰ってきたことが何よりも嬉しかったはずなのに。
「何故一人で敵陣に突っ込んだ」と、問い詰めるはずだったのに。
あの目を見た瞬間、完全に言葉に詰まった。
進むべき道に迷った目。己の未来を確信した光が消えていた。
思い返してみれば、あの夜―――初めて蒼天竜の涙を見たあの日から―――その光は薄れゆく一方だった。
何かに、怯えている。
(...何に？)
数秒も考えずに答えは出た。
―――己を否定されることに、だ。
あの大太刀に何を言われたのか。
もうほとんどの予想はついているが、...それを本人に問うつもりは毛頭ない。
もし仮に、蒼天竜がこの世の全てに否定されようとも、俺だけはお前を認め続ける。
味方でいてやる、何があろうと絶対にだ。
直接、正面から、そう伝えてやるべきだとは思った。
今現在も、心の底から思っている。
だが―――。
ただそうやって心の中で思うことと、"それを伝える権利があるかどうか"はまた別問題だ。
どこがどう別問題なのかは上手く説明できない。
しかし確信はある。
俺にその権利はない、と。
言ったところで、あいつは救われるのか？
傷付いた過去を背負い続けているあいつを、それだけで掬えると思うか？
答えは否だ。
それで全てが解決できるならとっくに動いている。
あいつを苦しみから引っ張り出せるのなら、とっくにそうしている。
それが出来ないから、こうしておろおろと悩んでいるのだ。
(...くそ...)
八つ当たり同然に、大倶利伽羅は小さく舌打ちした。
蒼天竜がこの本丸に顕現する前の己と比べて、随分と思考が軟弱になっている。
まるで、
...そう、まるで。
"人間のようだ"。
他人の事で悩むのも苛つくのも、人間だから出来る事であって。
...今の自分が、刀としての大倶利伽羅なのか、人としての大倶利伽羅なのか。
分からないのだ。
分からない内にあいつに近づけば恐らく―――。
また、不用意に傷つける。
...それは避けなければならない。
(逃げるのは、嫌いだ)
時間が全てを解決してくれるとは思わない。
それでも今はせめて。
ほんの少しだけ、心を整理する時間が欲しかった。
・
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＊紫苑＊(プロフ) - Ｒ−アル−さん» 一年半近くもお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした……！更新はさせていただきます、大倶利伽羅と蒼天竜の道の果てをどうぞもう少しだけ見守ってあげてください！ (2022年1月7日 13時) (
レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
＊紫苑＊(プロフ) - 鳴瀬さん» お久しぶりです！大変長らくお待たせしました……！確認したところ下書き中では完結となっていましたので、ここから整理して一気に放出してしまおうと考えています！もうしばらくお待ちくださいね…！ (2022年1月7日 13時) (レス) id: d8db5ba2d9 (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ−アル−(プロフ) - さ、さ、作者様？？？“終わり”になってますが続きは無いのでしょうか・・・？（泣） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 更新、ありがとうございます。続き、楽しみにしています。 (2020年5月13日 20時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
鳴瀬 - 最後まで、楽しみます。なので、体調に気を付けて頑張ってください。拗れに拗れているけど、そこが面白いです。伊達組、最高です。 (2020年4月23日 11時) (レス) id: 67ee969d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊紫苑＊ | 作者ホームページ：http://twitter.com/wakagi415
作成日時：2019年10月19日 21時
