#百五十一振り目 ページ8
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教えたい気持ちは山々だった。
今まで己が抱え込んできた過去を、そっくりそのまま加州に移してやりたいほどに。
だが、___多分それを実行したら、加州は混乱の沼から一生這いあがる事は出来ないだろう。
残っている記憶が、あまりにも断片的過ぎる。
今ここで全てを打ち開けてしまえば、…何も理解出来ずに終わるだろう。
加州の心にはまだ、間違いなく影華の影響が巣食っている。
「…悪いが、今は無理だ。戦に決着をつけてからでも遅くはないだろう。それまで___待ってくれ。俺にはまだ、話せない」
「戦、って。主が連れてきた軍隊との戦...?」
「!___あぁ、そうだ」
やはり影華はここを襲うつもりでいたのか。
軍隊と加州は言うが、...恐らく時間遡行軍の大軍だろう。
10年前の惨劇が、繰り返されようとしている。
その時その場所にはいなかった山姥切ではあるが、それに伴う計り知れない痛みは、誰よりも痛感していた。
歯噛みする。こんなところで止まっている訳には行かないのだ。
絶対に阻止する。
阻止しなければ、全てが終わる。
山姥切の腕を力なく離し、畳に崩れ落ちるようにして膝をついた加州に視線を合わせ、彼は声を張り上げた。
「この状況を打開して、奪われた記憶を取り戻すには影華と決着をつけるしかないんだ加州!Aに協力するしか方法は無い!...もう一度だけ頼む、ここを通してくれ!」
「…だ…」
「何?」
「…嫌だ…!嫌だ、絶対に違う!だって、俺の主がそんな、___そんな事する訳ない!!」
「ッ…!!」
立ち上がりざまに抜刀された刀身。
鼻先すれすれをかすめ、…思わず体を仰け反らす。
一歩反応が遅れていたらやられていたであろう一撃。
ゆらりと構えた加州の瞳に浮かぶ感情は、もはや山姥切でさえ読むことが出来なかった。
…伝わらなければもう一度やり合うしかない。
だがこの疲弊した状態で、どこまで持つか___。それは加州も同じのはずだが、彼は絶対に刀を手放そうとはしないだろう。
根比べに持ち込まれるのは辛い。
が、得意の捻くれた負けん気で何とか己を奮い立たせ、山姥切はまた構えた。
互いの隙を伺う。
幾度となく交えた刀は、すでにその動きに慣れ始めている。
どちらが先に動くか。
神経を尖らせた、その時。
「…!」
唐突に、加州が自分の頭を抱えてその場にうずくまった。
何らかの痛みに耐えるような歯ぎしり。
…そして。
「おい、嘘だろ...」
彼は、"その場から姿を消した"。
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*紫苑*(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます!続編完成しましたよ!(*^▽^*)続編の方でも楽しんでくださると嬉しいです…!(*≧∀≦*)あともう少しだけお付き合いください!よろしくお願いします! (2020年4月3日 21時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編気になるーーー頑張ってください!!!!大ファンです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 54588389f1 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑*(プロフ) - ちゃらんぽらんさん» 嬉しいコメントありがとうございます...!!1人でも多くの刀剣乱舞ファンの方を伊達組沼に落とそうと画策していた次第であります(笑)楽しんで頂いているようで作者も本望です(*^▽^*)続編、ラストスパートかけていきます!あと少し、よろしくお願いします!! (2020年3月23日 11時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - (続)寂しさも感じます、続きを楽しみに待っております!かなり長くなってしまって申し訳ない!更新頑張ってください!!! (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - 初コメ失礼します!!めっっっっっっちゃ続きが気になりすぎて夜しか眠れません((元々鶴丸だけを推してたんですが、この小説がきっかけで一気に伊達沼に堕ちました……サイコーだぜ…((続きが気になるし、早く読みたいと思う反面、伍で終わってしまうのか…という(続) (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi116
作成日時:2019年5月10日 18時