第一の指令 ページ4
「……ふむ、成程」
「…あ、の、」
「ん？」
俺が指令書を読んでいると、隣の彼女…主は肩と声を震わせて顔を俯かせていた。
「や、山姥切長義様…やはりA様には荷が重かったのでは…」
どうやらこんのすけにはあれが怖気付いて居るように見えるらしい。まぁたしかにそうだ。
「嗚呼、大丈夫。取り敢えず失礼。」
「え？な、なにを───」
俺はこんのすけの耳を塞いだ。
「あんッの鈍ボンボン野郎ッッ！！！！！！！！！」
予想通りかなり御立腹な御様子。
因みに俺から補足しておくと彼女は上層部のかなりのお偉い様に求婚されている。それを断ったが故に、振り向いてもらおうと無理難題を押し付けられている事が最近多くある。
…まぁ、そういうことだね。
「頭沸いてんのか？蒸し饅頭にしてやるぞ。なんならそのマッシュルームみてぇな頭全部削ぎ落とすか、長義さん刀貸して乗り込む」
…とまぁ怒った彼女はこうなる。
俺の刀は剃刀ではない。そして乗り込むな。
確かに茸みたいだなとは俺も思ってたが。
「落ち着け、今は任務が最優先……そうだろう？」
「どの口がそれを言う」
………………心が痛い。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
「ッはぁーーー………」
どデカい溜息を吐いて怒りを少しでも分散させる。
あの後長義さんにマカロンを渡されて一旦怒りは収まった。こんのすけ様に怖がられてしまったのはこの際諦めよう。
取り敢えず甘味は正義。一口で十分だけど。
「お疲れ様。一息ついたら行くよ？」
長義さんがベスト姿から戦装束に着替える生着替えを見ながらぼけっとしていたらそう言われた。
言われなくても分かってはいるが、如何せん身体が動かない。天岩戸のように動こうとしてくれない。
何方かお客様の中に裸踊りを出来る方はいらっしゃいませんか。
……なんてふざけていないで遺書を書こう。
何故かって？十中八九死ぬから。
「……何を書いているんだい？」
「遺書」
「…死なせるつもりは無いよ」
「死ぬ時は一緒と約束したでしょうに」
「あれは冗談と言うんだ」
「それこそ御冗談を。……戦場で刀が折れたら、それこそ死を意味します。…それは、貴方がよくご存知でしょう？」
私がそう言い切ると彼は黙った。私が何をしようと彼には迷惑をかけるつもりは無い。それに私は刀が折れる音が1番嫌いだ。
…敵を折ってる癖に、という言葉は間違ってはない。
人間は矛盾しながら生きていくものなのだよワトs……これは違うか
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作者名：伏見桜 | 作成日時：2021年5月3日 3時
