kn-2 ページ20
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「……ねぇ、シッマ、シッマはヒーローになれた?」
息も絶え絶えな幼馴染が口からはくはくと空気を漏らしながら、弱々しく言葉を紡ぐ。
支えた彼女の体は、あの時より成長はしているものの、矢張り力を込めたらぽっきりと壊れてしまいそうな程細くて軽かった。
「……俺は、お前を、お前だけを助けたかった。救いたかった。でも出来なかった。…ヒーロー失格やな」
彼女に情けない顔を見せてしまう事も構わず、視線をかち合わせる。彼女の目の焦点は朧げで、矢張り目を離したらそれこそ消えてしまいそうだった。
「は、は……なに言ってるの、シッマは、こうやって私の側に居てくれてるだけで、充分私のヒーローなんだよ。シッマの夢、叶ってるよ」
優しげに細められたその瞳は、あの日の公園で見た物から、全く変わっていなかった。
そうだ。そうなんだ。彼女は全く変わってなんかいない。
変わってしまったのは、自分の方だ。
あの日彼女と約束してからと言うもの、自分と彼女以外は全て切り捨てて生きてきた。
フィクションである家族だった奴らも、彼女を泣かせた村人達も、自分を利用しようとした奴らも。
全部ぜんぶ、自分たちには必要無かったから。
でも、ある男に誘われて、"俺"の世界は変わった。
今迄守りたいものは一つしか無かったのに、沢山増えた。
優先順位が、付けられなくなっていた。
嗚呼、自分がこんなに弱くなったせいで。彼女は、弱くなっていく自分を、否定せずに受け入れてくれたと言うのに。
"俺"の手を握る力が、段々と弱くなっていく。
「シッマ、シッマは私にとっての最高のヒーローだから…私以外の大切な人も、ヒーローとして救ってあげて。サボっちゃ駄目だよ?私はちゃんと見てるからね…」
握っていた手に、暖かさが欠けていく。
頰を伝う生暖かい液体には気付かないふりをして。
「お前以外にとってのヒーローになんてなりたく無いわ、阿保」
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破けた紙から何も読み取れやしない
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猫缶。(プロフ) - ゴミ箱さん» はい、その曲を意識しています。青谷さんの曲大好きなので、気付いて頂けて嬉しいです…! (2020年6月19日 16時) (レス) id: efdd73f72f (このIDを非表示/違反報告)
ゴミ箱 - 人生なんとなく生きてきたい歌のパロ入ってますか?入ってなかったらすみません、歌詞と似たような言葉を発見したのでつい、、、 (2020年6月19日 6時) (レス) id: efe6ff4b4a (このIDを非表示/違反報告)
猫缶。(プロフ) - もちもちさん» 書きたい欲が出てしまいまして……めっちゃ急ぎ足で書いてしまいました。やっぱ詐欺師組は自分の意思消してでも残酷な手段取ると思うんだ。お気に召されたのなら良かったです!またいつでもリクエストお待ちしてます! (2020年3月17日 19時) (レス) id: efdd73f72f (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 猫缶。さん» 仕事が!!!早い!!!!はい、詐欺師組格好良かったですありがとうございました。きっちり始末はする辺りやっぱ詐欺師組。そうやって内心とは裏腹にきっちり通すところ通してしんどくなるの好き。いつも通りで一気にしんどくなりました。いつも通りね…うわあ…。 (2020年3月17日 19時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
猫缶。(プロフ) - もちもちさん» コメント・リクエストありがとうございます!詐欺師組ですね、了解しました。遅くなってしまうかも知れませんが、精一杯書かせて頂きます。 (2020年3月17日 14時) (レス) id: efdd73f72f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫缶。 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fusan11302/
作成日時:2020年3月16日 23時