ｱﾅﾀ&ﾜﾀﾅﾍﾞ�� ページ32
「わっ…」
春風が髪の毛を乱していく。
キャンパス内には少し緊張気味の新入生が行き交っている。
入学当時はは私もあんなだったのかあ、なんて思い起こす。
今はサークルに勧誘する側だ。
「あれっ、Aイヤリングは？」
「え？」
友だちに声をかけられ、反射で耳に触る。
「え、え、うそ、ない……」
周りを見るが落ちてはなさそうだった。
(どうしよう、せっかくこうちゃんからもらったものなのに……)
さっきの風で飛ばされたのだろうか。
やっぱりピアスを開けるべきだったか。
(想像以上にショックだ、これ…)
私はこうちゃんが好きだ。
同じ学科で、授業もよくかぶっていたから仲良くなった。
LINEを交換して、一緒にご飯を食べて、遊びに行って…
この三年、たくさん彼を見てきた。
QuizKnockの動画も見るようになったが、画面の中にいても彼は彼のままだった。
嘘のない言動、くるくると変わる表情、彼のそういうところに強く惹かれた。
このイヤリングをもらったのは去年の誕生日だった。
私はこうちゃんの誕生日を、迷いに迷って良さげなお菓子で済ませてしまった。
しかし翌月こうちゃんから、控えめなデザインの、でも可愛らしくどこにでも付けていくことができそうなイヤリングをプレゼントとしてもらったのだ。
そのときは嬉しいのとお菓子で済ませてしまった後悔とが入り交じってたが、今ではイヤリングを付けてることでこうちゃんを感じられる気がするからとてもお気に入りだ。
そんなイヤリングが。
(なくなった……)
悲しさで勧誘のことをすっかり忘れ、唖然としているとき。
「あ、Aー！」
「っ、こうちゃん…」
「スノボぶりだよね。いま勧誘？」
「うん」
「あれ、どうしたの、テンション低いじゃん」
「あーいや、もらったイヤリング飛ばされちゃってさ」
悲しみに暮れてた、なーんて。
いつものように、2人でふざけてるときのように。
言えただろうか。
今、イヤリングをなくした悲しさをそのまま伝えたら私の気持ちまで伝えてしまいそうだった。
「…A」
「いやー、ごめんね！せっかくかわいいのくれたのに。選ぶの恥ずかしかったでしょ」
「そんなことない」
まっすぐ目を見て、こうちゃんが言う。
彼は実は目力が強い。
たまに圧倒されそうになる。
「Aの喜んだ顔が見たかったから」
繋がれた言葉の意味は理解できなかった。
──────────
続きます
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みな(プロフ) - ｢重いの｣という別れの言葉についクスッと笑ってしまいました。たしかに、川上さんは彼女さんを溺愛しそうですよね。どのお話も大好きです。これからも応援しています！ (2019年3月23日 2時) (
レス) id: 5b9d9394ea (このIDを非表示/違反報告)
茶之助丸(プロフ) - ありがとうございました！お世話いいですよね！私は山本さんを見ていると貢ぎたくなります笑 (2019年2月9日 12時) (レス) id: 1cdd5a0197 (このIDを非表示/違反報告)
しるく(プロフ) - 白さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！これからものんびりと書いていくので、よろしくお願いします。 (2019年2月9日 8時) (レス) id: d8286f6b99 (このIDを非表示/違反報告)
白 - このお話が大好きで何回も読み返してます...笑川上さんが好きなので、川上さんのお話がもっとみたいです...！内容は、作者様の描くものならどんなものでもすきなので、おまかせします笑更新楽しみにしてます！ (2019年2月9日 0時) (レス) id: 1d8409ab19 (このIDを非表示/違反報告)
しるく(プロフ) - 茶之助丸さん» ありがとうございます！定期的に病み、闇を書きたくなるので近いうちに書かせて頂こうと思います。 (2019年2月7日 21時) (レス) id: 5fa0f8094f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しるく | 作成日時：2019年2月4日 23時
