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朝食は分厚いトーストと書類 2 ページ22

ちょっとした沈黙の時間が5分くらい続いた後。

「ここ。」
「わぶっ!急に止まるなよ!!!」
角を曲がってぴたりと停まると、背中に新一君の頭がぶつかった感触がした。
意外と鈍臭い所もあるんだなぁ
弟みたいですごい可愛くなっちゃう

「木馬荘。米花町2丁目23番地、築40年。外観はボロだけど、東都の中心にしては家賃も安くて生活の便もいい。独り身に優しいアパートです」
「住所まで自分から堂々と教えちゃっていいのかよ…」

「そしてその103号室!1DK、南向きで日当たり良好、コンロは2口、風呂トイレ別!おまけに収納たっぷりな超良物件ですよ」
新一君の言葉は聞こえないふりをして、古い革のキーケースから鍵を出して鍵穴に挿し、施錠を解く。
それから、まるでエスコートするように扉を開け、その横で仰々しくお辞儀をした。

「ようこそ、我が城へ!実は新一君が初めてのお客さんです」

若干、否、かなり引き気味の新一君の背中を押し、入室を促した。

「お、おじゃまします…」

靴をきちんと揃えて脱ぎ、小さくそうつぶやいて、新一君は部屋にあがった。
こういうところに育ちの良さが出るんだなぁ

「その重そうなカバンはその辺に置いて、適当に待ってて」

コートを脱いで玄関脇に掛け、台所で手を洗う。
ついでに愛用している細口のケトルに水を入れ、火にかけた。

「随分殺風景な部屋だな。ここホントに女の部屋かよ」
「失礼ね。生活感が無くてホテルみたいで素敵って言うべきよ。あ、新一君ってコーヒー、大丈夫だった?」
「ああ。」

ダイニングの椅子に腰かけて少し居心地悪そうに辺りをキョロキョロと見回している新一君。

「物色したいんでしょ。散らかさないならいいよ。」

「へ?」

「違うの?私のこと探ってたみたいだし、実際住んでる部屋に入れる機会なんてそうないだろうから、いろいろ物色したいのかなって。まぁ、ダメって言っても後でトイレに行くとか言って結局色々調べるつもりだと思うけど」

驚きを通り越した顔とはまさに今の彼の表情だろう。

「…マジで言ってんのか?」
「マジで言ってるよ。まぁ出てこない自信があるからだけどね。」
「じ、じゃあ遠慮なく……」

そわそわと立ち上がり、こちらを気にしながら部屋を探り始めた新一くんを尻目に、私は冷蔵庫から卵をふたつ取り出した。

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よしのん - すごい好きです。応援してます! (2022年4月19日 12時) (レス) @page32 id: e3b8c03485 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 面白いです!続き待ってます!! (2022年4月18日 19時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいすな - 夢主のキャラ大好きです。新人との関係気になります! (2019年2月16日 22時) (レス) id: a004368014 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者A | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/zero1632  
作成日時:2018年12月26日 7時

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