The rookie ページ12
夜7時。肌寒いこの季節は夜の帳が降りるのが早い。
もうすっかり夜空には星が輝く様になった。
黒塗りの、いかにも な車から降り、装飾の電球がキラキラと輝く船着場を見渡す。
「お久しぶりです、レディ」
突然背後から、見知った男性の声がかかった。
「こんばんは、バーボン。それとも、今宵は“新人さん”とお呼びした方がよろしくて?」
タキシードスーツに身を包んだ彼が、港の煌びやかな燈の中に立っていた。
「お好きなように。」
「あら、以前お話した時とは随分雰囲気が違うのね」
「それは、貴女もでは?」
少しの皮肉も、にこやかにはぐらかされた。
こちらに歩み寄り、口許に上品に笑を湛えている。
「さぁ、ここは冷えます。中へ行きましょう。御手を拝借」
そう言うと彼は、半年前と同じように手を取り軽く口付けてから手を組み、乗り口のゲートへと向かった。
入手に少々手こずった招待状の封筒を提示すると、
「ようこそおいでくださいました、黒川御令嬢。ご案内致します。」
ぴっちりとタキシードを着こなしたボーイさんに案内をされ、船内へと歩を進めた。
「こちらがお部屋になります。20時より3階ホールにて開宴となりますのでお越しくださいませ。」
「ありがとう。ご苦労さま」
ボーイさんに適当にチップを渡して部屋に入る。
「さて、本日の作戦は如何なものでございますか?黒川お嬢様?」
さっきの皮肉の仕返しか、バーボンはからかうようにそう言って、後ろ手に部屋の扉を閉めた。
それを横目に見つつ、私は寒避けのコートを脱ぎ、真っ赤なカクテルドレスだけになる。
「武器密輸の情報はもう入っているの。決定的な証拠が欲しいわ。顧客リストがあるんだけど、その情報端末は彼が常に身につけてるみたい」
「となると、女の武器ですか」
私が脱いだコートを受け取り、バーボンがクローゼットに掛けてくれる。
「女性がお好みでなければ貴方がよろしくね。指示はこれで。高いやつだから壊さないでね」
「うっかりシャンパンにダイブさせてしまったらすみません」
インカムの極小イヤホンとマイクをいたずらっぽく笑うバーボンに渡し、私も取り付ける。
「ちゃんと見て仕事を覚えてね、新人執事さん」
「お易い御用です。お嬢様」
ワックスでオールバックにされた彼の前髪の後毛を撫で付け、微笑んだ。
そして船は港を出航した。
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よしのん - すごい好きです。応援してます! (2022年4月19日 12時) (レス) @page32 id: e3b8c03485 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです!続き待ってます!! (2022年4月18日 19時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいすな - 夢主のキャラ大好きです。新人との関係気になります! (2019年2月16日 22時) (レス) id: a004368014 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者A | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/zero1632
作成日時:2018年12月26日 7時