348話 ページ49
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『はっくしょん!』
くしゃみとともにズズッと鼻をすする。
「何?風邪でも引いてるの?」
向かいで眉を顰めたのは、灰原哀。
『昨日から熱っぽいとは思ってたんだけど…』
「顔色、あまりよくないわ。季節の変わり目でこじらせたんじゃない?薬は?」
『飲んでない…』
「まったく。待ってなさい」
灰原はリビングを出て行ってしまう。
冬も終わりかけのこの日、俺は阿笠邸を訪れていた。
空気銃の定期メンテナンスの為だ。
威力が強い分、本体への負担も大きいため、定期的にメンテナンスが必要らしい。
メンテナンスが終わるまでの間、灰原と他愛もない話をしながら待っていたが、気づきたくなかった体調不良を指摘されてしまった。
元組織の科学者の目は誤魔化せないか。
零さんは今朝早く登庁したため、気づいていないだろう。
「強がりか何か知らないけど、薬くらいしっかり飲みなさい。子供じゃないんだから」
戻ってきた灰原は水と錠剤を机の上に置いた。
『仰るとおりで…』
苦笑しながら、錠剤を口に含み、水で流し込む。
『前の世界じゃ風邪引いても気づかないフリだったから、つい』
「…前の世界では何をしていたの?」
気になるのか、灰原は躊躇いながらも聞いてきた。
『…警察だよ。公安警察』
「…全然見えないわ」
『失礼な』
「でも、貴方の今までの言動を見てれば、嘘じゃないのは分かるわ」
一応、納得はしてくれたようだ。
『灰原さんは、本当はいくつだっけ?』
「…18よ」
『…本当に?18にしては大人びすぎてない?コナンくんもだけどさ』
「失礼ね。それに、工藤くんは十分子供っぽいと思うわよ」
女性から見たら男はみんな子供っぽく見えるって言うし、そういうことなんだろう。
『本名は?』
「…宮野志保よ」
割と素直に答えてくれるなぁ。
『可愛い名前だね』
「…貴方は?」
『真白楓』
「可愛い名前ね」
『うるさいな。小さいころはこれでからかわれてたんだよ』
「あら、素敵な名前だと思うけど?楓の花言葉は“大切な思い出”ね」
花言葉なんて気にしたことなかったけど、そうなんだ。
「メンテナンスが終わったぞ〜」
博士が地下から戻ってきた。
『ありがとうございます。けほっ…』
立ち上がった反動で咳き込んでしまった。
「…そうだ、ちょうどいいから、ひとつ頼まれてくれないかしら?」
そう言って微かに笑う灰原に、嫌な予感がした。
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようで嬉しいです!頑張ります!!これからもよろしくお願いします! (2019年6月7日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします! (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです! (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…!本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします!こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年5月23日 22時