346話 ページ47
俺はただ、零さんに喜んで欲しくて、毎日俺なりに頑張っていたのに。
どうして、そんなこと言うの。
俺の努力を、何も知らないくせに。
持っていた買い物袋が手から離れドサッと床に落ちた。
ガシャンと卵が割れる音がしたが、もうそんなこと、どうでもいい。
「…A？」
『もういい』
今回のことは、全部零さんが悪い。
疲れているのは分かってる。
多少八つ当たりされても、いつもは受け入れてきたけど、今回はあんまりだ。
何もかも、無駄だったんだ。
「おい、A…」
俺の様子に、まずいと思ったのか、少し焦った様子の零さんが立ち上がって近づいてきた。
『来んな…っ！』
肩に下げていたバッグを外して、彼の顔面に投げつけた。
「ッ!?」
綺麗にヒットしたバッグは床に落ち、中身がぶちまけられる。
有希子さんに教えてもらいながらメモをし、付箋がたくさん貼られた紙束が床に散らばった。
「これ……」
そのレシピの束を見て、零さんが固まった。
『…少しでも、あんたの負担を減らせればって…頑張ったのに…、全部、無駄だったんだな』
「…料理、習いに…？」
『そうだよ！指だって、もう切らないようになったんだよ……、自分でも、いろんな料理調べて、零さんが好きな和食だって…作れるように、なったのに…』
驚かせたかった。
美味しいって、言ってもらいたかったのに。
「わ、悪かった…。まさか、料理教室に通ってるとは思わなくて…」
『余計なことだった？俺が作った料理なんて、食べたくない？』
「そんなことない！その…仕事で、いろいろあって、八つ当たりだ…。すまなかった」
しゅんと頭を垂れる零さんが犬のように見えた。
その姿に、すっと頭が冷静になる。
『…今日はもう寝る。おやすみ』
寝室へ引っ込もうと背を向けたが、引き止めるように背後から抱きつかれた。
「待ってくれ。…一緒に作ろう」
『…でも、卵割れたし』
そう言うと、零さんは俺を離して床にしゃがみこんだ。
「…4つは無事だ。オムライスでも作ろう？一緒にな」
袋の中を見て、俺を見上げて笑みを浮かべる。
オムライス…。
俺が今日作ろうと思っていた料理だ。
『…美味しいの作って、見返してやるんだから』
「それは楽しみだ」
いつもの調子に戻った零さんが、立ち上がって俺の頭を撫でる。
割れた卵の片づけをした後、俺たちは2人でキッチンに立ったのだった。
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようで嬉しいです！頑張ります!!これからもよろしくお願いします！ (2019年6月7日 22時) (
レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます！これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…！本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします！こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：096 | 作成日時：2019年5月23日 22時
