345話 ページ46
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それからしばらく、料理上達のため俺は沖矢さんのいる工藤邸に通い、有希子さんが置いていってくれたレシピ通りに片っ端から料理を作った。
「だいぶ上達したな」
今ではすっかり、怪我なく料理が出来るようになった。
これなら、零さんにも喜んでもらえるかもしれない。
『美味しい?』
一人で作ったビーフシチューを食べる赤井さんに感想を聞く。
「ああ。美味しいよ。やはり気の持ちようで、お前はやればなんでもできるんだな」
その言葉にホッとする。
「これなら彼も、満足してくれるだろう。…しかし、大丈夫なのか?毎日のようにここに通っていたが、彼は何も言わないのか?」
『さすがに、赤井さんのところに通ってるとは言えないし、サプライズにしたかったから料理勉強してることも伝えてないけど…。向こうも忙しいみたいでなかなか家にいないから、大丈夫だと思うよ』
「それならいいが…。お前たちは互いに言葉足らずですれ違いが多いように思うからな」
心配してるのだろうか、あの赤井さんが。
『今日は夜には帰るって言ってたから、さっそくご飯作って待つことにするよ。キッチン貸してくれてありがとな』
「またいつでも来るといい」
食べ終えた食器を洗って、上機嫌で帰路に着く。
スーパーによって晩御飯の食材を買う。
晩御飯はオムライスにしよう。
俺がこの世界に来て、初めて零さんが作ってくれた料理だ。
喜んでくれるといいな…と、思っていたのに…。
「毎日毎日、どこに行ってるんだ」
俺より早く家に帰っていた零さんは、「おかえり」の言葉をくれなかった。
仕事が煮詰まっているのか、それとも組織の仕事の後なのか、不機嫌すぎる彼にたじろぐ。
『どこって…家に引きこもってるわけにもいかないし…』
「仕事でも始めたのか?」
『そうじゃ、ないけど…』
素直に料理の勉強に行っていた、と言えればいいのに、サプライズにしたい俺のプライドが拒んだ。
「…買い物に行っていたのか」
俺が持っていたスーパーの袋に零さんが気づいた。
『う、うん』
「はぁ…、余計なことをするな。どうせ作るのは僕なんだから」
溜息を吐いて、こちらに背を向ける零さん。
「作ろうとしてるならやめてくれよ。キッチンが汚れる」
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようで嬉しいです!頑張ります!!これからもよろしくお願いします! (2019年6月7日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします! (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです! (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…!本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします!こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年5月23日 22時