319話 ページ20
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朝起きたら記憶が戻っていた――…なんてご都合展開はなくて、目を覚ました僕の目の前にはすやすやと眠るお兄さんの顔があった。
どうしたら、お兄さんにAさんを返せるんだろうか。
お兄さんと大人の僕の関係が、ただの友達ではないことは分かってる。
お兄さんにとって、大人の僕はすごく大切な人なんだ。
その証拠に、お兄さんは大人の僕の話をするとき、すごく悲しそうで…愛おしそうな目をする。
大切な人がいなくなる悲しみは、すごくよく分かるから、早く返してあげないと。
お兄さんを起こさないようにそっとベッドから抜け出して、着替えを済ませた僕はそろりと家を出た。
頭に衝撃を受けて記憶を飛ばしたのなら、同じ衝撃を与えれば戻るかもしれない。
でも、下手をしたら今度こそ死んでしまうかも…？
勝手に出てきたこと、お兄さん怒るかな…。
大事な大人の僕の体を傷つけたら…。
知らない町を、何の頼りもなく歩く。
財布は持ってきたから、いざとなったときは大丈夫だと思うけど。
お兄さんに、大人の僕との思い出の場所でも聞いておけば良かったな…。
『わ…っ』
ドンッと、路地から出てきた誰かとぶつかって体がよろめく。
なんとか踏ん張って、ぶつかってきた誰かを振り返るが、もう姿はなかった。
『…危ないな……』
何をあんなに急いでいたんだろう…。と、何気なく足元に目をやる。
『………え』
そこには、血にぬれたナイフが落ちていた。
『あ……』
あの時の光景が、フラッシュバックする。
男が持っていた、血が滴るナイフの妖しく鈍い輝きを――…。
「きゃああぁぁぁ！」
誰かの悲鳴でハッと我に返った。
近くにいた女性は、顔を真っ青にして僕を見ている。
着ていた白のパーカーには、血が付いていた。
さっきぶつかった人についていたものから移ったのだろう。
じゃあ、これは…一体誰の血……？
『…え？』
路地に目をやって、ぺたんとその場に尻餅をついた。
あの日と同じ血の海に、若い男が一人倒れていた。
指先にナイフが当たり、思わずそれを掴んでしまった。
あの人も、父と母と同じ…これで……。
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようで嬉しいです！頑張ります!!これからもよろしくお願いします！ (2019年6月7日 22時) (
レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます！これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…！本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします！こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：096 | 作成日時：2019年5月23日 22時
