232話 ページ33
・
「お前、まだここにいたのかよ」
眼下で慌しく動いている部下たちをビルの屋上から見下ろしていると、背後から声がかかった。
『…涼か』
松岡涼。
警視庁公安部で働いていた部下で、警察学校時代の同期。
共に組織に潜入し、俺を庇って死んだ男。
「未練があるのは分かるけどさ、いつまでも留まるのもよくないんだからな」
『ずっと心配だったんだよ。俺がいなくなって、あいつらちゃんと仕事できてるのか』
コナンの世界でも、俺は死んだのだろう。
気がついたら俺は、自分の名が刻まれた墓の前にいた。
すぐにこの体が霊体だと気づいた。
あの墓の下に、骨と灰になった自分がいるのかまでは分からなかったが。
そんな俺の前に現れたのが、涼だった。
迎えに来たのだろう。
少し時間をくれないかと言った俺に、彼はわかったと返事をして自由にさせてくれた。
俺はすぐに元職場に向かった。
俺がいなくなった職場は、どこかまだぎこちない。
死んでから、半年は経っているようだった。
俺がいた場所には、新しい人物が就任していて部下たちはその人物に従っていた。
「やっぱり、まだお前の死を引きずってるやつらが多いみたいだな。慕われてたし、お前」
『…俺がいなくても、やっていけるようになってもらわなきゃ困る』
働く部下たちを再度見つめ、立ち上がった。
「…行くのか？」
『…その前に、寄りたいところがある』
立ち寄ったのは本屋。
当然物は触れないし、眺めるだけだ。
立ち止まったのは漫画コーナー。
“名探偵コナン”の単行本前だ。
この中に、いるんだよな…。
思い浮かべるのはあの世界の中で関わった人々。
特に…。
「次の映画、安室さんがメインだってー！」
「絶対見に行かなきゃね！」
隣で女子高生が話しているのが聞こえた。
映画が…安室さんメイン…？
そんなに人気な人だったのか…、まぁ、そうだよな…。
それにしても、映画でメインをはるなんて……、絶対大きな事件に巻き込まれるだろ…。
ちゃんと支えてあげないと……。
…って、何考えてるんだ。
もう戻れない。
…会えない、のに。
「……お前はどっちが大事なんだよ」
『……こんなこと言ったら、警察失格なんだろうけど…。俺は……』
「…愛の力には勝てないか」
涼の言葉に目を見開いて彼を凝視する。
きっと顔は真っ赤だ。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1539人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優(プロフ) - わかりました！返信ありがとうございます！ (2019年5月8日 7時) (
レス) id: 2e7cf744fc (このIDを非表示/違反報告)
096 - 優さん» コメントありがとうございます！この作品は、主人公受けとなっております！ですが、細かい描写はございません。 (2019年5月7日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - これって、黒瀬さんと零さん、どっちがネコとかありますか？ (2019年5月7日 2時) (レス) id: 2e7cf744fc (このIDを非表示/違反報告)
096 - 架印�靴気�» 報告ありがとうございます！！確認不足でした...！修正させていただきました！ (2019年4月30日 18時) (レス) id: 674cb05958 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 誤字報告：247話 - 真純ちゃんの純の字が、澄になってます。 (2019年4月30日 17時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：096 | 作成日時：2019年4月10日 21時
