2088話 ページ39
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「国際指名手配犯であるスコーピオンが捕まったらしい」
帰宅して早々、その一言。
『……へ、へぇ』
唐突すぎて、思わずどもってしまった。
「スコーピオンを連行してきたのは捜査一課の白鳥警部だったらしい。だが、スコーピオンへの事情聴取中、その白鳥警部が帰って来たそうだ。休暇で行っていた軽井沢から。つまり、スコーピオンを連行してきた白鳥警部は偽物ということになる」
この人にはもう、全部伝わってるようだ。
キッド案件は管轄外とか言っていたくせに…。
「それで?お前はどんな活躍をしてきたんだ?」
『俺は…いつも通り傍観することしか…』
「じゃあ、この怪我は何だ?」
『い…っ!』
突然伸びてきた零さんの手が、俺の右肩に触れた。
手当てをしてもらって痛みは若干引いていたものの、触れられるとまだ痛い。
『……なんで分かったの』
「分かるさ。服の後ろの方が焦げてるし、焦げ臭さの中に消毒液の匂いもしてるし」
車内も暗くて、あまり自分では見ていなかったから分からないが、背中側はボロボロのようだ。
上着を脱いで確認すると、確かに右肩部分から背中にかけて焦げて破れており、もう着られそうにない。
「…痛みは?」
『少し。でも、すぐに処置はしてもらったから、痕は残らないと思う』
「…そうか」
今度は優しい手つきで、零さんはガーゼを撫でる。
『…あまり連絡しないで、心配かけてごめん』
「うん。…でも、ちゃんと帰って来てくれたから、今はそれでいい」
……“今は”、ね…。
「ご飯できてる。食べるだろ?」
『あ、うん。手、洗ってくる』
洗面台に行き、手を洗う。
着ている服を脱いで、とりあえず部屋着のスウェットに着替えた。
リビングに戻ると、こちらに背を向けて食事の支度をしている零さんの姿。
日常だけど、幸せな光景。
写真に思い出として残せればいいけれど、立場上それは出来ないこと。
それは少し寂しいけれど、少しでも多くの時間、この光景を目に焼き付けていたい。
「…どうした?もう準備出来るぞ」
振り返った零さんと目が合い、不思議そうな顔をされた。
『なんでもない。お腹すいたー』
形に残る思い出じゃなくても…、何年か後に、こんなことがあったと笑い合える日が来ることを願って――…。
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096 - 神楽さん» 続編のほうに続きますので、そちらでお楽しみください!また、リクエストありがとうございます!前向きに検討させていただきますのでお時間いただくと思いますがお待ちください! (2023年1月1日 21時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - きたぁぁぁ!?!?ハロ嫁楽しみにしてます!!リクエストしたいです!!出来たらでいいので市川海老蔵さんの話を書いて欲しいです!!お願いします!!頑張ってください!! (2022年12月31日 21時) (レス) @page50 id: 17798d130b (このIDを非表示/違反報告)
096 - SINGさん» 迫るハロ嫁編もどうぞお楽しみに!更新頑張ります!! (2022年12月26日 21時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
SING - もうちょいでハロ嫁ですね!!男主君はどんな役回りするのか楽しみです!更新頑張って下さいヾ(・ω・*)ノ (2022年12月26日 9時) (レス) @page43 id: 48ea09d8f7 (このIDを非表示/違反報告)
096 - びぃちゃんさん» 読んでいただきありがとうございます!ハロウィンという単語が出てきましたね!楽しみにしていただけたら幸いです!これからも頑張ります!! (2022年12月25日 20時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2022年11月13日 20時