2028話 ページ29
俺にとっての風見さんのような存在は涼だったが、あいつは警察学校の同期でもあったし、公安に配属される前から信頼関係は築けていた。
でも風見さんにとって、零さんは年下の上司であり、まだ少し怖い存在なんだろう。
“恐ろしい人”。
零さんに向かってそう言っているのを、警視庁の屋上で聞いたことがある。
羽場二三一が実は生きていたと知った時の反応だ。
『零さんが怖い?』
そう尋ねると、風見さんは机に伏せたままピタリと動かなくなった。
「………ええ。怖いです」
少しの沈黙の後、風見さんはそう呟いた。
「…でも、自分は降谷さんを信じています。あの人の信念を信じています」
顔を上げて俺を見据えながらそう言った風見さんの力強い瞳に、フッと笑みが漏れた。
『…うん。これからも、支えてあげて』
「はい…!」
…俺は、ずっと風見さんが羨ましかった。
俺がいたい場所にいる人。
零さんの隣で、この国を護る人。
今のパートナーという立場に不満があるわけじゃない。
でも、俺の存在と立ち位置はあまりにも脆すぎる。
いざというとき、前線に立つことは出来ない。
俺も公安として…零さんと一緒に働いてみたかった。
――…そんなことは出来ないから、とっくに諦めはついている。
だから風見さんとこうしてサシでゆっくり話してみたかったのだ。
彼が零さんをどう思っているのか。
零さんの隣に立つ覚悟がどれだけのものなのか。
…全部、杞憂だったようだけど。
「う…っ、こうして話せる人、今までいなかったから…!少しラクになったよ…っ」
『なんで泣く』
ボロボロと涙を溢し始めた風見さんに引いた。
「もしまた機会があれば…話を聞いてほしい…!」
『それは全然構わないけど…。風見さん、酒弱くない?』
5杯でこれは公安として心配になる…。
「何言ってるんれすか!自分酔ってましぇん!!」
『いや、呂律回ってないし』
そろそろ帰って寝てもらった方がいいな…。
『すみません、お会計を』
店員さんを呼んで、会計を済ました。
宣言通り俺の奢りだ。
「あ!自分も払います…!」
『いいって。それより立てます?タクシー呼ぶから』
立ち上がり、風見さんに手を差し出す。
「す、すまない…」
俺の手を取って、風見さんはおぼつかない足取りで立ち上がった。
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096 - つぐみさん» 速攻で仕事を終わらせたんでしょうね(笑)風見もいいキャラしてますよね。黒瀬とゆっくり絡ませたかったので、書けて良かったです! (2022年10月24日 21時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
つぐみ - やっぱり零さんお迎えにきてた(笑 風見さんはゼロの執行人を観てから推しの1人です。今回黒瀬くんといっぱい会話してて嬉しかったです。続きも楽しみにしております。 (2022年10月23日 23時) (レス) @page30 id: 06437837a6 (このIDを非表示/違反報告)
096 - つぐみさん» 私の中で風見さんは可愛い枠です(笑)割と動かしやすくて好きです。務まってますよね!風見さんは! (2022年10月22日 21時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
096 - ☆ねこ☆ねこ☆さん» 零さんの右腕が風見さんでよかったと私は思ってます!風見さんじゃないとおそらく務まらないですよね(笑)風見さんは凄い! (2022年10月22日 21時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
つぐみ - 風見さんが可愛い(笑 大丈夫、ちゃんとちゃんと務まってるよかざみん! (2022年10月22日 15時) (レス) @page28 id: 06437837a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2022年9月23日 18時