82話 ページ33
『…あ、安室さん…?』
「…はい、安室です」
俺の下で、戸惑ったように手を挙げ、降参ポーズを見せている彼。
『ごっ、ごめんなさい!』
ようやく状況に気付き、俺は彼の上から飛び退いた。
寝ぼけて彼の首を押さえつけた挙句、押し倒したらしい。
首を擦りながら起き上がった彼は、苦笑を漏らす。
「驚きましたよ。随分魘されていたので、起こした方がいいのかな、と声をかけてみたら、急に殺意を向けられて首を絞められて押し倒されたんですから」
『ほ、本当に申し訳ないです…』
「大丈夫ですよ。怖い夢でも見たんですか?」
『少し…』
昔の、記憶の夢だ。
「…朝食が出来てます。落ち着くように、ホットミルク淹れますね」
俺の様子に、これ以上追及するのはやめてくれたんだろう。
キッチンに戻ってお湯を沸かし始めた彼の背中を見る。
一般人が、寝ぼけてあんな動きをするなんてありえない。
彼も思うところがあるだろうに。
近くに凶器がなくてよかった…。
あれば、確実に……。
組織に潜入していた頃は、特に周りの気配に敏感で、眠ることもまともに出来なかった。
何かあったときのために、枕の下には常に拳銃を忍ばせていたものだ。
「今日はお休みしますか?顔色があまりよくないですね」
『いえ…大丈夫です。昨日休んだから行かないと…』
「ならせめて、朝食はしっかり摂って下さい」
目の前に置かれたのは、パンケーキとベーコンエッグ。サラダ付。
そしてホットミルクだ。
「僕も今日は午後からポアロでバイトなので、終わる頃に迎えに行きますよ」
『いや、あの、本当に大丈夫です。迷惑はかけられませんから』
「これくらい迷惑じゃありませんよ」
俺を、守ろうとしないで。
「なんなら、送っていきましょうか?」
『大丈夫だって言ってんだろ…!!』
思わず声を張り上げ、ハッとする。
安室さんは驚いたように俺を見つめていた。
『っ、すみません、今日ちょっと変みたいです。…もう行きますね』
せっかく作ってくれた朝食に一切手を付けず、スマホと財布を持って、俺は家を飛び出した。
『…最悪』
部屋の前でしゃがみこんだ。
こんなにお世話になっているのに、あんな態度をとってしまうなんて。
あんな夢を見たからだ。
守られるのは嫌いだ。
俺の代わりに、誰かが傷つくなんて、もう嫌だ。
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鹿野ユズナ(プロフ) - いえ、お力になれたようでよかったです! (2019年4月25日 11時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 鹿野ユズナさん» コメントありがとうございます!恥ずかしながら、ずっと勘違いしておりました…。次回から気をつけます!ご指摘本当にありがとうございました! (2019年4月21日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - こめかみ、漢字変換が全てお米の神様になってます………… (2019年4月21日 5時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 大福さん» コメントと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも読みやすく楽しい小説を目指して頑張るので、よろしくお願いします! (2019年3月13日 20時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
大福 - 楽しく、読みやすいです。続きが気になります!次の更新楽しみに待ってます。 (2019年3月12日 16時) (レス) id: 2b112b86de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年2月11日 21時