853話 紺青の拳 ページ4
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「…はあ、まったく今回の事件はなんで俺が巻き込まれたんだ?」
陽が沈み、対岸でライトアップされたマリーナベイ・サンズを眺めながら、キッドがため息をつく。
綺麗な夜景が目の前に広がっているが、とてもその景色に感動するような気分にはなれなかった。
「シェリリンさん殺しの現場に俺のカードを残したのは、本当にレオンなのか?」
「いいや」
キッドの疑問をコナンはあっさりと否定する。
「エレベーターに貼られたカードが見つかったのは、現場検証が始まってかなり経ってから。なぜだと思う?」
それはきっと…そのカードを貼ったのが――…。
と、心の中で推理していた時、コナンのスマホが振動した。
「最新のタンカーの針路解析だ。――…えっ⁉」
画面を見たコナンが目を見開いた。
ざわりと、嫌な予感が胸を占める。
『…まさか…』
「マズい!このままだとタンカーがホテルに‼」
コナンが声を上げた時、マリーナベイ・サンズ前で何本もの噴水が噴き上がった。
まさかこれから、タンカーが突っ込んでくるなんて思いもせず、光と水のショーが始まったようだ。
『とにかく、ホテルに急ごう』
俺たちはショーを眺めるたくさんの人々を躱しながら、ホテルへの道を走った。
タンカーがマリーナベイに突っ込むなんてことになったら、街の崩壊はおろか、死者も出かねない…!
目の前を走るコナンは蘭に電話をかけているようだが、繋がらないらしい。
彼女もきっと、マリーナベイにいる。
『…!』
ふと海の上に目をやると大きなタンカーが見えた。
それは真っすぐ、マリーナベイに向かっている。
あんなでかい塊が突っ込んだら、ひとたまりもない…!
だけどここからじゃ、どうすることも出来ない。
ショーを見ていた人々も、徐々に異常に気付き始めたようだ。
だが、もはや誰にもどうすることも出来ず――…ズガァァンッという衝撃音がシンガポールの夜の中に響いた。
衝撃で起きた波は橋を超え、津波となって襲い掛かる。
逃げ惑う人々の波に逆らい、俺たちは走り続けた。
『コナンくん!』
途中、人の流れに押し出されそうになるコナンの体を抱き上げる。
「くそ、間に合わなかった…!」
なおも止まらないタンカーを見つめ、コナンは俺の腕の中で悔しそうに表情を歪ませた。
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096 - はしもんさん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2020年4月21日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
はしもん(プロフ) - 898、899話更新お疲れ様です! これからもずっとずっと、応援させてください(´˘`*) 大好きです!! (2020年4月20日 14時) (レス) id: 3a59eb0a02 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 稲荷さん» はじめまして!嬉しいお言葉ありがとうございます!このコメントを読んでから私も改めて“さだめ”を聴いたら、確かに…!となりました!曲を聴いて2人を思い出してくれるなんて嬉しいです!これからも応援よろしくお願いします! (2020年4月20日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
096 - くれはさん» まだ終わりません…!(笑)どうぞお楽しみに…!! (2020年4月20日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
096 - はしもんさん» 一難去ってまた、という感じですね!いえいえ!私も話数ミスがあったので、修正しました! (2020年4月20日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2020年3月22日 22時