【名探偵コナン】異世界の訪問者18《男主》

870話 ページ21

じっと見つめていると、零さんは諦めたように深くため息を吐いた。


「…僕以外に、お前が親し気に崩した口調で喋るのを見るのは…少し……いい気分ではないな」

『…零さんは、本当に俺が好きだよな』

「……悪いか？」

『んなわけねぇだろ。…ずっとそうやって、俺だけ見てろよ。この国からもいつか、奪ってやる』


ずっと心に秘めていた野望を口にすると、零さんは息を呑んだ。




「……はあ、やっぱり、タチが悪い」

『ふふ、こういうのが好き？』

「…言ってるだろ。どんなAでも好き」


言葉と同時に口を塞がれる。


そのままキスはどんどん深くなっていく。




『ん…、は…』


その気持ちよさに浸っていると、零さんは唇を離し、近距離で俺の瞳を見つめた。




「…真白楓も黒瀬Aも、どちらもお前だ。真白をもう殺すな。黒瀬のように、本音を隠して笑顔の仮面をつけたまま接する必要はもうないんだ」

『…確かに最初のころはそうだったけどさ…、あんたが俺を変えたんだ。これから少しは、零さんに対して口調が砕ける時もあるかもしれないけど、根本的なところは変わらないよ』


でも、今回こうして話す機会があってよかった。



真白楓は死んでいない。
確かに一度死んだ身ではあるけど…心はまだ、ここにいる。



真白楓も黒瀬Aも…今ここに存在している。

それを零さんの口から聞けて良かった。




『黒瀬は、真白が失った感情を全部持ってるやつだった。…嬉しい、楽しい、幸せ…。だけどそれは任務を遂行するための偽の感情。…でも、零さんはそれらを本物にしてくれた。俺(真白)が失った感情を、与えてくれた。…ありがとう』

「この仕事をしていると、自分自身を見失うときがある。それは僕も同じだから分かるよ。だから今度は…僕が見失いそうなとき、手を引いてくれ」

『もちろん。最初から…そのつもりであんたの傍にいるんだ』



俺と同じ運命を…最愛の人に辿らせないために――…。






「…それじゃあ、話を聞かせてもらおうか」

『…え？もう俺のことは何も――…』

「シンガポールでのこと。ベルモットと何を話したか。詳しくだ」

『…お手柔らかに頼むよ、ダーリン』



結局のところ、真白も黒瀬も、この人には敵わない。




でも、こうやって怒っている顔も結構好きだ。
だって、俺を大切に思ってくれているが故って知っているから。


…ぜってぇ言ってやらねぇけど。





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