【名探偵コナン】異世界の訪問者12《男主》

595話 ページ46

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『あれ』


ぼんやりと考え事をしながら歩いていた体は、自然とポアロの前にやってきていた。



本能って怖い…。





外から店内の様子を覗くと、安室さんがいつもの笑顔で接客していた。

見つかる前に立ち去らないと、とすぐに踵を返す。



だが無常にも、ちりん、と背後から鈴の音が響いた。





「あのっ」



他でもない彼の声に呼び止められて足を止める。

だが、なかなか振り返ることが出来なかった。




「少し、お話いいですか」


安室透の口調で、鋭さを秘めた声音。

できるだけ、なんでもないといった風に振り返った。



『…なんでしょうか？』

「…病室で、お会いしましたよね。真白楓さん」

『…ああ、裕也の上司の方、ですよね』

「…彼の、風見さんの職業はご存知で？」

『…探偵助手、と聞いていますが？』

「そうですか」



警察だと知っていると言ったら、零さんはきっと俺を怪しむし、風見さんも怒られる。




『お怪我はもういいんですか？』

「…ええ。おかげさまでね」



ああ、この腹の探りあいをしている感じ…懐かしいなぁ。





「そういえば、今ドラマに出ている黒瀬Aさんとそっくりですけど…」

『ああ、それは俺の芸名です。そのドラマ限定で俳優をしてまして。撮影が終わったのでもう引退してますけど』

「そうだったんですね。金髪と黒髪じゃ、だいぶ印象が違いますね」




……貴方が…金より黒のほうがいいって言ってくれたんだよ…。





こうして話せば話すほど、苦しい。

貴方がいないと、俺がこの世界にいる意味はないのに。





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