【名探偵コナン】異世界の訪問者《男主》

16話 -Side降谷- ページ17

・


子供達と蘭さんが帰ってから、彼はカウンター席に移動して、ずっと何かを考えているようだった。
　

頭を抱え、時々泣きそうに表情を歪めたり、諦めたように嘲笑を浮かべたり。

一体彼に何があったのか、知りたいと思った。
　



試作品のケーキを差し出し、それを食べた彼は美味しいと表情を綻ばせ、そのあとじわりと目に涙を浮かべた。



『ごめんなさい…。本当に不安で…、どうしてここにいるのか…、これからどうすればいいのか、何も分からなくて…。得体の知れない俺に、みんな優しくて…』
　

これは本心だと思った。彼は本当に怯えている。
自分が置かれている状況が分かっていないのは、本当らしい。
　

・


退勤時間になり、一度バックヤードに引っ込み、エプロンを外して荷物を持って、再び店に出ようとしたときだった。
　


【ふるや】。

彼の口から小さく、その名前が聞こえた。
　

どうして、その名前を。
それは一体、誰のことを言っている…？
　

平静を保って店に出て彼に声をかけるが、特に変わった様子はない。
　

僕のことじゃない…？それとも聞き間違いか…？
　

僅かに警戒しながらも、僕と彼は店を出て車に乗り込んだ。



・

17話 -Side降谷-→←15話 -Side降谷-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す