30話 探偵たちの夜想曲 ページ31
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『……濡れてる』
食器棚を開けて触れたカップがまだ水気を帯びていた。
まるでさっき使って洗ったばかりのようだ。
蘭が拭かずに食器をしまうような性格だとは思えないけど…。
いろいろ考えていると、視線を感じて顔を上げた。
「…気付いていますよね」
俺が何かを感じていることを、彼は感じとったようだ。
『…トイレに、誰かいます』
そう言うと、安室さんは踵を返して毛利さんの方へ向き直った。
「みんなでって、私達も?」
「他に誰がいるんだよ」
「ではまたみんなでコロンボに行きましょう」
『え』
安室さんは俺の手を握って事務所の外の階段へ続く扉を開けた。
「さあさ、皆さん急いで!」
「ほら、早くしないと依頼人さんが待ちくたびれちゃうよ」
コナンも気付いているようだ。
二人に急かされて、俺達は事務所の外へ出た。
「ったく、俺だけでいいんじゃねぇのか?」
「まぁまぁ」
「だってみんなでって言ってるんでしょ?」
扉を閉めて、階段を下りずにそこにとどまる。
「皆さんお静かに」
安室さんが人差し指を口元に当て笑みを浮かべた。
「おそらくこういうことですよ。依頼人を毛利さんに会わせたくない人物がいて、場所変更の偽メールで先生を追い払い、空になった探偵事務所でその人物が事務所の人間として依頼人と落ち合ったんです」
「ええ!?」
「しっ…、その証拠にこのドアの鍵穴には鍵をこじ開けた痕跡があり、台所の食器棚の中に僅かに濡れたティーカップが入っていました。そうでしたよね、黒瀬さん」
『え、は、はい。濡れてました』
「蘭さんの性格からして、濡れた食器をそのまま食器棚にしまわないでしょう?」
「は、はい…」
「それにさ、出かける前におじさんがテーブルに落としたタバコの灰も、綺麗にふき取られてたよ?これって僕達が出かけてる間に誰かが拭いたんじゃないかな」
「つまりそれは、誰かが先生の留守中に依頼人を招きいれ、テーブルの上を拭き、紅茶を出してもてなした痕跡。そのティーカップをよく拭きもせずに棚にしまったから、まだ濡れていたというわけですよ」
安室さんの推理に、蘭は困惑する。
「でも、なんでそんなことを…!コインロッカーを探しに来てもらっただけなのに」
「そのロッカーにとんでもねぇもんが入ってるんじゃ…」
「さあ?それは、本人に聞いてみましょうか」
言いながら、安室さんは探偵事務所の扉を開けた。
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096 - ゆずりはさん» 返信遅くなってしまいすみません…!2週目嬉しいです!改めて楽しんで頂けると幸いです! (12月5日 20時) (レス) @page23 id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 2週目読ませて頂きます!黒瀬くんめちゃくちゃ好きです!♡ (11月14日 20時) (レス) @page2 id: c114e89f61 (このIDを非表示/違反報告)
096 - はるさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません!2回目読んでいただきありがとうございます!!ハロと出会うのは444話です! (2022年9月13日 15時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
はる - すごく面白いです!!!ストーリー読みやすくて、2回目を見てます((笑。 聞きたいことがあって、ハロと出会うシーンって何話でしたっけ?思い出せなくて、、、 (2022年8月11日 17時) (レス) id: 9c65c52711 (このIDを非表示/違反報告)
096 - みこさん» ありがとうございます!とても長いですが、ぜひ楽しんでください! (2019年8月21日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年1月30日 17時