13話 ページ14
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車を降り、彼についてアパートに入る。
階段を上り、角部屋が安室さんの部屋だった。
「さぁ、どうぞ」
『お邪魔します』
玄関から綺麗だったが、どこか殺風景だ。
リビングに入ると、やはり殺風景。
リクライニングソファとローテーブル、テレビ。
キッチンが併設されているだけだ。
やっぱりここは仮住まいと見ていいだろう。
「すぐ散らかしちゃうので、必要最低限のものはおかないようにしているんです」
『そう、ですか』
俺の仮住まいもこんな感じだったな。
「何もないですが、くつろいでくださいね」
『すぐ働き口を探して家を出るので、それまでお世話になります』
「急がなくても、ゆっくりでいいですよ。僕は留守が多いので、自分の家だと思って。でも、寝室は立ち入り禁止です」
そこまで言われると、寝室に秘密があると言っているようだ。
『わかりました』
「じゃあこれ。渡しておきますね」
差し出されたのは鍵だった。
「スペアキーなんですけど、合鍵として使ってください」
『…あの、いいんですか?』
鍵を受け取るのを一瞬躊躇った。
「何がですか?」
『今日会ったばかりの俺にこんな…。どこの誰かも知らない人間を家にまで上げて、居候させるなんて』
そう聞くと、安室さんはきょとんと目を丸くした。
「…どうして、なんでしょうね。自分でもよく分かりません」
『は…?』
「普段ならこんなこと、絶対にしません。ですが、なぜか放っておけなかったんです」
俺の手を取り、その手に鍵を握らせた。
「貴方は僕に何か隠して、嘘をついている。いえ、僕にだけじゃないですね。でも、その隠し事も嘘も、僕の脅威になることではない」
『…どうして、そう思うんですか?』
「…勘ですよ。黒瀬さんと同じです」
そう言って笑みを見せる安室さん。
本当のことを言いそうになったが、ぐっと堪える。
どうせ信じてもらえないし、言ったところでどうにもならない。
元の世界に戻れたとしても、俺はきっと死んでいる。
今まで日本のため、組織に潜入して自由を失っていたんだ。
この世界では、自由に生きてみても罰は当たらないだろう。
彼がこの世界でどんな立ち位置にいるのか分からないが、今頼れるのはこの人しかない。
余計な詮索はせずに、少しでも彼の役に立てればいい。
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096 - ゆずりはさん» 返信遅くなってしまいすみません…!2週目嬉しいです!改めて楽しんで頂けると幸いです! (12月5日 20時) (レス) @page23 id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 2週目読ませて頂きます!黒瀬くんめちゃくちゃ好きです!♡ (11月14日 20時) (レス) @page2 id: c114e89f61 (このIDを非表示/違反報告)
096 - はるさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません!2回目読んでいただきありがとうございます!!ハロと出会うのは444話です! (2022年9月13日 15時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
はる - すごく面白いです!!!ストーリー読みやすくて、2回目を見てます((笑。 聞きたいことがあって、ハロと出会うシーンって何話でしたっけ?思い出せなくて、、、 (2022年8月11日 17時) (レス) id: 9c65c52711 (このIDを非表示/違反報告)
096 - みこさん» ありがとうございます!とても長いですが、ぜひ楽しんでください! (2019年8月21日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年1月30日 17時