10話 ページ11
「く、黒瀬さん?どうしました…?」
戸惑った安室さんの声が前から聞こえた。
『…ごめんなさい…。本当に不安で…、どうしてここにいるのか…、これからどうすればいいのか、何も分からなくて…。得体の知れない俺に、みんな優しくて…』
人前で泣くなんて、いつぶりだろうか。
恥ずかしいけど、涙は止まらない。
「……いいですよ。ここなら、僕と梓さんにしか見えてませんから」
優しい声と共に目の前のカウンターに置かれたのは綺麗な皺一つないハンカチだった。
『…貴方に愛される女性は、幸せになるでしょうね』
心からそう思う。
「…いえ、僕は誰かを幸せにすることなんて出来ませんから」
にこやかに言われた言葉に、微かに陰を感じた。
やっぱりこの人は、どこか俺と似ている…と感じながらもハンカチで涙を拭う。
「そろそろ上がる時間なので、準備してきますね。待っていてください」
『あ、はい』
安室さんはバックヤードに引っ込んだ。
「…優しいですよね、安室さん」
榎本さんが彼の去った扉を見つめながら呟いた。
『誰にでも、あんな感じですか?』
「ええ。仕事も出来るし優しいし、非の打ち所がない人ですよ」
みんなにも信頼されているようだ。
そういえば、安室さんの声はすごく耳なじみがある。
昔再放送で見た某ロボットアニメの主人公の声優さんとおそらく同じ人だろう。
『確か…古谷さん…』
ベテラン声優を起用しているということは、安室さんはやはり主要人物の一人なのだろう。
「……お待たせしました。行きましょうか」
『あ、お疲れ様です』
一瞬険しい表情をした安室さんがすぐに笑みを浮かべてバックヤードから戻ってきたので、慌てて席を立った。
「またいらしてくださいね」
にこやかに送り出してくれた榎本さんに会釈をし、安室さんを追って店を出た。
・
2485人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
096 - ゆずりはさん» 返信遅くなってしまいすみません…!2週目嬉しいです!改めて楽しんで頂けると幸いです! (12月5日 20時) (レス) @page23 id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 2週目読ませて頂きます!黒瀬くんめちゃくちゃ好きです!♡ (11月14日 20時) (レス) @page2 id: c114e89f61 (このIDを非表示/違反報告)
096 - はるさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません!2回目読んでいただきありがとうございます!!ハロと出会うのは444話です! (2022年9月13日 15時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
はる - すごく面白いです!!!ストーリー読みやすくて、2回目を見てます((笑。 聞きたいことがあって、ハロと出会うシーンって何話でしたっけ?思い出せなくて、、、 (2022年8月11日 17時) (レス) id: 9c65c52711 (このIDを非表示/違反報告)
096 - みこさん» ありがとうございます!とても長いですが、ぜひ楽しんでください! (2019年8月21日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2019年1月30日 17時