桜吹雪の舞う頃に

6話 ページ7

次郎吉「これが今回キッドが予告した紅い薔薇(ブラッド・ローズ)じゃよ」

　目の前の宝石はその名の通りインカローズとは思えないほどに赤い。思わず食い入るように紅い薔薇(ブラッド・ローズ)を見ていると「咲夜ちゃんもAと一緒でインカローズ好きなんだね…」と後ろから蘭に声をかけられ、狼狽えながらもなんとか誤魔化すことができた。
　すると歩いてやってきた青子のお父さん…中森警部が次郎吉さんに「ほんとにもう一つの方は心当たりねえのか?」と耳打ちをした。…中森警部と少し離れたところにいる私にも聞こえたのだから、すぐそばで聞き耳を立てていた新一に聞こえていないわけがないわけで…案の定「もう一つって?」と中森警部に詰め寄っている。

中森「ああ…実は紅い薔薇(ブラッド・ローズ)と一緒に何かを盗むつもりみたいだが…それが何なのか全くわからなくてな…」

　【世界一の怪盗であることを証明するためにプリンセスを盗む】予告状にそう書かれていたという中森警部の言葉に息を呑んだ。確証はないが私の勘が正しければ、キッドが紅い薔薇(ブラッド・ローズ)と同時に盗むものは…「おのれ怪盗キッドめ‼‼何が世界一の怪盗だー」と叫んで入る中森警部の声聞き取れても情報処理が追いつかないほど私は混乱しているらしい。

コナン「咲夜⁉大丈夫か?」

　新一がぎょっとした様子で私の顔を覗き込んできた。多分、今の私は驚きと焦りが入り混じったすごい顔になっているだろう。「大丈夫よ」と無理やり口角を上げて言うと、新一は不服そうな顔をしながらも引き下がった。
何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸をすると、大分気が楽になった。…焦ったままでは冷静な判断が出来なくなってしまう。

咲夜「…焦っちゃダメ、冷静さを失ったらおしまいなんだから…」

　数年前に、私の一番大切な人から言われた言葉を思い返して苦笑を浮かべた。私の勘が当たって、快斗が怪盗キッドだとしたら怪盗をやっている理由をちゃんと話してもらおう。快斗が私利私欲のために宝石を盗んでいるわけがない。事実、キッドは盗んだ宝石を必ず返している。…落ち着いて冷静な判断さえできれば、こんなことすぐにわかることだった。

咲夜「＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿…ほんと、その通りですね＿＿君…」

　ニヤリと笑った彼の顔が思い浮かんで、思わず泣きそうになってしまった。

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