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二十一個目 ページ22

「私が、国見君、を……悪の道に引っ張ってしまったんです」


声が震える。


「国見君は私が頭おかしい奴だってわかってながらも関わってくれたのに、だから、私のせいで……」


ああ、こんな言い方しかできない私はなんて卑怯なのだろう。言い切ることも引くこともできないなんて。


「……画鋲も国見ちゃんかな」
「……っ」
「国見ちゃんが……入れたのかな」


違う。違うって言わないと。


「ちが……」
「ん?」
「私が……っ、入れました」


もう全て終わりにしよう。これ以上紙もなく壁を刺す画鋲にはなりたくない。
せめて国見君やファンの人達を悪い立場にしてしまった分、さらに仲間の人達にも心労をかけた分の罪を被ろう。私の気持ちなんか二の次にして。

それで少しは償えるだろうか。

顔を上げると、真剣な表情でこっちを見るその人が映った。


「私、中学の時いじめられてて。やられて一番嫌で、かつ効果のある方法をしました」


嘘は言わない。でもなんでそんなことしたのかと問われれば嘘を作ろう。償うために。守るためになんて戯言聞かせられないというのもあるけど。

女の子達にする笑顔も相槌も仲間に見せる穏やかな雰囲気もなく、ただ真顔でこっちを見るその人。

ああなんで私の人生はいつもこんなことになるんだろう。


私のせいか。


堪えられなくなり、視線を落とした。


「でも一回も刺さらなかったよ」
「……それは、運が良かったですね。あれだけ入れておいたのに」
「刺さらないように見えやすくされてたよ」
「っ……気のせいですよ」


お願いだからもう終わりにして。そんな言い草だと少し期待してしまう。


「Aさん、工夫してくれたんじゃないの」
「知らないです」


切り捨てるようにそう言うと、元通りになったケースを拾って鞄に入れた。


「画鋲、ありがとうございました。私のことは誰に口述して頂いても構いません」


鞄を肩に掛けて立ち上がり、深く頭を下げた後踵を返した。

あれ、なんか大切なこと忘れてるような。

まぁ……気のせいか。






“Aさん”

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水野ひのは(プロフ) - 緋鞠さん» 緋鞠様ありがとうございます。少しでも良かったと思って頂けたなら嬉しいです!きっと大変綺麗な心をお持ちなんですね。ありがとうございます!頑張らせて頂きます! (2020年1月29日 18時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
緋鞠(プロフ) - コメント失礼します。題名で気になり読んでみたら、いつの間にか泣いていました。素敵な作品をありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2020年1月29日 17時) (レス) id: 207604f612 (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - 風華さん» ドラゴンフルーツというのもありですね!大丈夫ですドラゴンフルーツと答える方もかなりいます。正常です。私の父は迷わず赤飯と答えました。これは異常です。コメントありがとうございます。 (2020年1月2日 16時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - 初コメ失礼します!赤い果物で思いついたのがドラゴンフルーツだっんですけど…私の方がおかしいですかねw (2020年1月2日 11時) (レス) id: a3f48bb6df (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - ティラミルクさん» ティラミルク様丁寧なご指摘ありがとうございます…!わっ、目なんて根も葉もないですね…。修正させて頂きました。拙い作者ですのでまた何かあれば言ってやってください! (2020年1月2日 0時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水野ひのは | 作成日時:2019年12月29日 11時

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