靴に画鋲を入れます【及川徹】

二十個目 ページ21

にこりと笑ったその人はおもむろにしゃがみ、廊下に広がった画鋲を広い始めた。

なんで。


「あの、危ないんで触らないでください」
「一人じゃ大変でしょ。手伝わさせて」
「……すみません」


どうしたらいい？ 今私はどんな顔すればいい？
気まずさと焦りで何も考えれぬままただ目の前にあるものを手にする。針に気を付けて手に乗せケースに入れていく。

もうバレてるんだろうな。終わりだ。

なんて不甲斐ない終わり方なんだろう。かっこわるいというべきか、情けないというべきか。


「……あの、ごめんなさ……」
「これ、委員会とかで使ってるの？」


まさかの一言に思わず言葉を失った。委員会？探りを入れてるつもりなのかな。


「風紀委員とかだと画鋲よく使うんじゃない？誤解されちゃった感じ？」


……雰囲気的にはどことなく真剣っぽいけどどうなんだろう。勘が鋭いこの人のことだ。もうわかっててもわざとそう言ってる可能性だってある。性格もそこそこひねくれている。


「そうですよね。風紀委員は使いますよね」


否定も肯定もしないのが一番だ。
はは、と愛想笑いを浮かべると、困り顔で眉を下げるその人を横目で少し捉えた。
早いとこ集めて上手く騙して逃げよう。一秒でも早くここから逃げないと。


「うちの国見ちゃんがお世話になってるみたいでありがとうね」
「……え？」
「あれ違ったかな？最近君といるところを何回か見かけてたからさ。あの紙、国見ちゃんでしょ」


せつなげな笑いが目に映ったその瞬間、頭の中を高速で色々な考えが巡り出す。

バレてる。
ということはやっぱり全部知ってたんじゃ。
でもなんでそこまで知ってたの。わざわざ助けてくれたの。
私達の関係知られてた。
嘘はつけない。
このままじゃ、国見君が悪者にな……。


「違っ……」
「君は協力者って感じかな。国見ちゃんには絶望したよ」
「違うんです！あの、あれはっ……」


私が入れろって言った？ 私が脅した？ それとも全て吐く？
嫌だ。そんなの。言ったらこの人は……。

でも……もうあんな思いはしたくない。


「私が、全部悪いんです」

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