29話 ページ29
「じゃあ陽ちゃん、これ、 佐倉さんに持ってってあげてね」
「うん」
「A?あいつのとこ、戻らないの?」
「さっき棗を見かけたから。
声かけてくるね」
「わかった」
「棗、こんなとこにいたの?」
「何してんだ、アイツ」
「ホワロンを食べるために、お小遣い稼ぎですって」
「なんだそれ」
「マッチ売りの蜜柑、はじまるよー」
広場に声が響き渡ると、街ゆく人が足を止め出した。
「あ、陽ちゃんアリス使った...」
佐倉さんが陽ちゃんのアリスに向かって、小枝で「悪霊退散ー!!」と叫んでいる。
「って、わぁぁぁ燃えてる燃えてる!!リアルに燃えてる!!」
もしかしてと横を見ると、どうやら棗の悪戯のようだった。
「なら私も」
「待って待って!!雷雷!!危ないって!!!」
雷のアリスを使って、佐倉さんに当たらない程度の雷を出した。
続けて蛍ちゃんから水の攻撃。
「踏んだり蹴ったりだね...笑」
「手ぇ出したのはお前だろ」
「棗だって」
私たちは向かい合って小さく笑い合った。
「..なんか、久しぶりだね。この感じ」
「..そうだな。
行くか」
「行くってどこに?」
「ずっとアイツにつきっきりだったんだろ。次はお前の行きたい店行くぞ」
「いいの...?」
「早くしろ」
棗は強引に私の手を取って歩き出した。
でもその手は優しく、同い年とは思えないほどに逞しかった。
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作者名:ゆら | 作成日時:2023年9月20日 0時