25話 ページ25
「棗とはね、この学園に入る前から顔見知りだったの。って言うのも、私は陽ちゃんぐらいの年で自分が何者なのかを理解していた。
そのせいで小さい頃から大人に狙われる日々が続いてた。
大人の目的は色々あるわ。人身売買に賭博、下心を持っていた大人もいたでしょうね」
「そんな小さい時から...」
「能力者である私を、両親は気持ちわるがり、一人で外を歩き回る毎日だった。
時には本当に親切な気持ちで手を差し伸べてくれていたのかもしれないけれど、当時の私は大人を、人間を信じられなかった。
でも飢えには耐えられなかった。
ある日、食べもをのあげるからと言われてついていった先は、とある戦場地だった。
そこで私は初めての命令を受けた。そして初めて人を殺めた」
「ひ、人を...」
「驚きでしょ？まだ３歳や４歳そこらよ？
笑っちゃうよね。
でもね、その時に初めて棗に声をかけられたの。
私を助けたいって
私はその手を振り払った。人間が怖くて、優しさが怖かったから。
それでも棗は手を差し出し続けてくれた。
時には守ってくれて、時には叱ってくれて、私は、この人なら大丈夫と思うようになっていった。
そして行く先のなかった私は棗と一緒にこの学園に入ったの」
「なんか...辛いこと話させてごめんな？」
「いいの」
「棗くんとAちゃんが昔からの知り合いだったのは風の噂で聞いてたけど、そんなに小さい時から仲良しだったんだねぇ」
「お互い以外誰も信用できない環境だったからね。
棗も、心にあいた隙を何かで埋めたかったんだと思う。」
「そんなことないよA」
「流架..」
「心の隙間を埋めたかったのは確かにそうなのかもしれない。
でも棗は本当にAを支えにしてるんだ。
棗、いってたよ。Aがいるから頑張れるって。Aが俺の人生を支えてくれてるんだって」
「なんか...照れるね...笑」
「なんや普段は見せんくせにラブラブなんやなぁ〜」
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作者名：ゆら | 作成日時：2023年9月20日 0時
