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12話 ページ12





「棗」



「なんだ、眠れないのか」



「うん」








棗の部屋はいつ見ても生活感がない。

シンプルで余計なもののない部屋。








棗は私の腰を引き寄せて一緒にベランダへ出た。






「寒くないか」



「うん。大丈夫」



「嘘つけ。これきてろ」



「(棗のブレザー...)ありがと」



「体、大丈夫か」



「うん。棗こそ、もう平気なの?」



「あぁ。心配かけたな」



「・・ねぇ棗、あの子...佐倉蜜柑さん、気になるの?」




肩にかけられた棗のブレザーが落ちないように、ぎゅっと引き寄せた。

いつもそばにいるのに、少しだけ・・・





寂しい。





「は?何言ってんだ?」



「だって棗、なんだかすごくあの子を気にしてるみたいで」



「違ぇよ。厄介なアリスを持ってる上にいつも周りをうろちょろしてるのが気に入らねぇだけだ」



「そっか。...ちょっとだけ不安だった...」






棗は"あの子"が来てからおかしい。


ずっとあの子を気にかけている。アリスが判明する前も...今も




でもあの子はすごく眩しい。


きっとあの子なら・・・



「ばーか。何余計なことで悩んでんだよ。

俺は最初からお前しか見てない。Aだけだ」



「んっ...」








触れるだけの優しいキス。


彼のアリスからは想像もつかないほどに優しい。






「ずっとずっと、このまま時が止まればいいのに。

そしたら私も棗も任務になんて行かなくていいのに」






そんな私の声はか弱く夜空に溶けた。

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作者名:ゆら | 作成日時:2023年9月20日 0時

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