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お会計が終わり2人揃って外へ出る。
特に先ほどと変わらない雨足だ。
雨宿りの意味、なかったな。
そして駅に行っても意味ない。電車出ちゃってるし。
タクシーか…家まで結構遠いのに…
映画館は家と反対方向の場所だった。
「タクシー拾いますか?」
「ホテル行こうか」
「………。はい?」
脳が言葉の意味を処理するのに時間を要した。
一体何言ってるの?この人。
「すぐそこだよ」
バーのさらに奥の路地を指す。
少し離れたところにそれらしいネオンが見えた。
え、ほんとに言ってる?あれってあれじゃん。
もちろん私は行ったことないけど!
そういうコトする場所じゃん。
中島主任おかしくなっちゃった?
「えっと…主任どうしたんですか?
言ってることおかしいです」
「おかしいかな?
帰る手段がなくなって、家から遠いとこにいるから、泊まらない?って提案してるだけだよ」
いやいや。だけだよって。
おかしいですやん。
「森田さん、明日休みでしょ?俺は早く起きて出勤するよ」
「そんなこと…」
「俺のお願い聞いてくれるんじゃなかったの?」
少し笑って言われる。
酒代の対価がホテルって、どう考えても釣り合わなくない?
「じゃあいいよ。俺はタクシーで帰るつもりないからひとりでも泊まっていくよ。
森田さんはタクシー捕まえたら?」
そう言って背を向けられる。
「まって!…ください…」
彼の腕を掴む。
彼が振り向いた。
引き留めたけど、私も行きたい、とか言うの、どう考えてもおかしいでしょ…
黙っていると彼が私に一歩近づき口を開いた。
「ごめんね、意地悪だったね。
大切な部下なんだから何もしないよ」
「そう、ですよね」
よく考えたらその通りだ。ただの同僚なんだから。
ひとりで意識していたみたいになって、それもまた恥ずかしい。
「じゃあ、行こうか」
とりあえず掴んだ彼の腕から手を離す。
が、逆に彼から手を握られてしまった。
「え…」
「俺に寄って歩いて。じゃないと濡れる」
彼の右手には、折り畳み傘が握られていた。
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にこ(プロフ) - こたさん» コメントありがとうございます!今回は内容的に心配要素が多いので、応援の言葉が沁みます😭ありがとうございます。引き続き楽しんでもらえるよう頑張りますので、よろしくお願いします! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 719bc577fe (このIDを非表示/違反報告)
こた(プロフ) - はじめまして!にこさんの描くお話がすごく好きです🙇♀️陰ながら応援してます!更新楽しみにしてます💙 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 3b0c2534bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にこ | 作成日時:2022年5月29日 21時