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◇
こういう時、どんな顔をすれば良いか分からないの。
割と冗談じゃなくて、こんな言葉が胸の中で反芻された。これ、冗談以外で言いたい時あるんだ。
「あの、……昨夜は」
「すみませんはナシだ」
「……」
答えは沈黙。いや、私がそれしか返せないってだけで。
ああう、と変な声を出しながら昨夜のことを思い出す。ちなみに私はベッドの上で正座、彼───降谷さん、は、あぐらをかいている。なんで人様のベッドの上でこんなことしてるんだろう、私は。
『なんで、私なんかと───』
羞恥心とか申し訳なさとかで死にたくなった。
私、なんてひどいこと言ってたんだ、昨夜。
……最悪すぎる。この人は謝るなという圧をかけてくるが、こんなもの土下座謝罪モノだろう。医療費払ってくれてその上面倒見てくれた人に対してあんなこと、言って───
『……わけなんて、いらないんだよ』
思い出した。
それだけじゃ、なかった。
何も私が喚き散らしてそれを宥められたってだけじゃなかった。
私が私自身に突き立てるナイフを、この人は素手で掴むみたいに。
このひとは、否、降谷さんは私のことを否定したことなんてなかったのに、私は私を否定していた。そう思い込んでいた。そうすることで、何か安心を得ていた のだ。
自分で引くセーフライン。傷つかないように被っていた安全帽。でもそれは、傷つかない代わりに、最も必要なものも得ることができなくって。
昨日のことをとつとつと思い出す。恥ずかしいし、穴があったら入りたい。
でもそれと同時に。嬉しくて嬉しくてたまらないところも、あって。
人の心の中に勝手に入ってくるんじゃねえよ、と思った時もあった。けど、必要以上に拒否していたのは私だった。だからこの人は、力づくでこじ開けてくれたのだ。それが───それが嬉しくて、嬉しくて。
喚いて、泣きじゃくって。その上で、私のことを肯定してくれた。
あの熱は、多分この先、一生忘れられないだろう。それほどに、火傷しそうに。
多分誰でも良かったわけじゃない。
なんて形容すれば分からないけど───これは、多分、降谷さんだから、嬉しかった。
ばかだなあ、って、思った。
申し訳ないとか羞恥心とか割と今更感ある。もうあれ以上の羞恥とか多分ない。
だから私が今言うべきことは、
「あの───ありがとう、ございます」
FILE.4 ページ4
こういう時、どんな顔をすれば良いか分からないの。
割と冗談じゃなくて、こんな言葉が胸の中で反芻された。これ、冗談以外で言いたい時あるんだ。
「あの、……昨夜は」
「すみませんはナシだ」
「……」
答えは沈黙。いや、私がそれしか返せないってだけで。
ああう、と変な声を出しながら昨夜のことを思い出す。ちなみに私はベッドの上で正座、彼───降谷さん、は、あぐらをかいている。なんで人様のベッドの上でこんなことしてるんだろう、私は。
『なんで、私なんかと───』
羞恥心とか申し訳なさとかで死にたくなった。
私、なんてひどいこと言ってたんだ、昨夜。
……最悪すぎる。この人は謝るなという圧をかけてくるが、こんなもの土下座謝罪モノだろう。医療費払ってくれてその上面倒見てくれた人に対してあんなこと、言って───
『……わけなんて、いらないんだよ』
思い出した。
それだけじゃ、なかった。
何も私が喚き散らしてそれを宥められたってだけじゃなかった。
私が私自身に突き立てるナイフを、この人は素手で掴むみたいに。
このひとは、否、降谷さんは私のことを否定したことなんてなかったのに、私は私を否定していた。そう思い込んでいた。そうすることで、
自分で引くセーフライン。傷つかないように被っていた安全帽。でもそれは、傷つかない代わりに、最も必要なものも得ることができなくって。
昨日のことをとつとつと思い出す。恥ずかしいし、穴があったら入りたい。
でもそれと同時に。嬉しくて嬉しくてたまらないところも、あって。
人の心の中に勝手に入ってくるんじゃねえよ、と思った時もあった。けど、必要以上に拒否していたのは私だった。だからこの人は、力づくでこじ開けてくれたのだ。それが───それが嬉しくて、嬉しくて。
喚いて、泣きじゃくって。その上で、私のことを肯定してくれた。
あの熱は、多分この先、一生忘れられないだろう。それほどに、火傷しそうに。
多分誰でも良かったわけじゃない。
なんて形容すれば分からないけど───これは、多分、降谷さんだから、嬉しかった。
ばかだなあ、って、思った。
申し訳ないとか羞恥心とか割と今更感ある。もうあれ以上の羞恥とか多分ない。
だから私が今言うべきことは、
「あの───ありがとう、ございます」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2023年3月6日 21時